奈良県医師会 原 健二
最近、処方された薬の大量の飲み残し(残薬)が問題となっています。
からだの具合が悪く、受診して薬をもらったけれど、症状が良くなったので飲まなくなったということもあるでしょう。しかし多くの場合、残薬は慢性の病気に処方されている薬で問題となります。
糖尿病や高血圧、高脂血症などでは、薬は長期間飲み続ける必要があります。このような病気をかかえている人は脳卒中や心臓病などを合併していることも多いため、薬の種類もさらに多くなります。
薬は基本的に必要最小限の日数分を処方することになっていますが、病状の安定した慢性疾患の患者さんに対しては1ヶ月の処方、薬によっては3ヶ月の長期処方も認められています。このような事情が大量の残薬をうむ素地になっているとも考えられます。
また、複数の医療機関に通院している場合、同じような効能の薬が処方されることもあり、医師や薬剤師は薬が重複しないように他の医療機関からもらっている薬について確認しています。患者さん自身もほかから薬をもらっていることを伝えることが必要です。
とは言っても、薬が残ってくる第一の要因は飲み忘れです。薬の種類と一日の服薬回数がふえるほど、飲み忘れもふえます。つまり薬の管理がうまくできなくなると残薬がふえると考えられます。ちょっとした注意力の低下やもの忘れで飲み残しが増えます。また目が悪いため似通った形状の薬を間違えることもあります。
高齢者では認知症が増えてくるという問題もあります。さらには一人暮らし、老老介護(高齢者が高齢者を介護する)、認認介護(本人、介護者とも認知症)といったことも薬の管理に支障をきたす要因です。家族と同居していても昼間はひとりというケースもあります。
まず大切なことは、必要な薬を飲み忘れないでしっかりと管理することです。それでも薬が残ってきたら、主治医や薬剤師にそのことをしっかりと伝えましょう。どれだけ残っているのか分からないときには、残薬を持参してもらえば確認してくれます。薬が病気に対して有効に作用するためには、飲み過ぎや飲み忘れには注意が必要です。