奈良県医師会 七浦 高志
肝臓には正常な人でも少量の脂肪が含まれていますが、その脂肪、特に中性脂肪が肝臓に過剰蓄積した状態を脂肪肝といいます。脂肪肝と聞くと、それほど怖い病気ではないと思う方も多いと思いますが、放置していると肝硬変や肝臓がんに進行してしまう可能性があります。
肝臓の働きが低下すると、全身のだるさ、食欲不振などの症状が出ますが、脂肪肝の場合は、ほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断の際に、血液による肝機能検査や超音波(エコー)検査で偶然に脂肪肝が発見されることが多いようです。
脂肪肝の原因は、アルコール性のものと非アルコール性のものがあり、さらに非アルコール性の原因としては、肥満、糖尿病、高脂血症などがあります。
アルコール性脂肪肝は多量の飲酒生活を続けていると、肝硬変へと進行する危険があります。
一方、非アルコール性脂肪肝については、以前はほとんど重い肝障害に進むことはないと考えられていました。しかし、近年になって、アルコールをほとんど飲まない人でも、肝臓への脂肪の蓄積だけでなく、炎症をひき起こす非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)になることがわかってきました。お酒を飲まない脂肪肝の人の10%がNASHであると言われており、NASHと診断された人の約20%が5~10年たつと肝硬変へ進行するとの報告もあります。NASHかどうかを鑑別するには、肝臓の組織を一部採取して顕微鏡で詳しく観察する肝生検(かんせいけん)といわれる検査が必要です。
脂肪肝の治療や進行の予防として、アルコール性の場合は禁酒が最も効果的です。どうしても禁酒が無理な場合は節酒を心がけるとともに、週に2日はお酒を飲まない日をつくりましょう。肝臓を休ませてあげることで、脂肪の代謝が改善したり、肝臓の機能が回復しやすくなります。
また、非アルコール性の場合は、過食を控えるとともにバランスの良い食事を心掛け、適度な運動を続けるなど、生活習慣を改善する努力をしましょう。
そして、定期的な検査も必要ですので、脂肪肝を指摘された方は、かかりつけ医にご相談ください。