奈良県医師会 岩井 務
風邪が治ったはずなのに、咳がちっとも治まらない、といったような状態が数週間続いたら、それは咳喘息かもしれません。咳喘息は、慢性的に咳が続く気管支の病気です。
一般的な喘息と同様、気道(呼吸する時に空気の通る道)が狭くなり、色々な刺激に対して過敏になって、炎症や咳の発作が起こります。室内外の温度差やたばこの煙を吸う受動喫煙(喫煙者の周囲の人が、そのたばこの煙を自分の意思とは無関係に吸わされること)、運動、飲酒、ストレス等の他、ホコリやダニ等のいわゆるハウスダストが発作の要因になると言われており、患者数は年々増加しています。この病気は特にアレルギーのある人に多いとされるのはアレルギー反応によって、気道が炎症を起こしてしまうためです。風邪に併発して起こることが多く、風邪を引いた後に2~3週間以上、咳が続くことがあれば、この病気の可能性があります。女性に多い傾向があり、しばしば再発を繰り返します。
咳喘息の症状は1ヶ月以上、空咳が続きます。ひどい場合は咳が1年以上続くこともあります。だだし、喘息にみられるゼイゼイ、ヒューヒューと言った喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難はありません。夜中から明け方に激しい咳が出たり、寒暖の差や喫煙で咳が出やすくなるのが特徴です。のどにイガイガ感を伴うこともあり、長話をした際、のどが渇いたり枯れたりもします。
咳喘息の診断は問診で病歴を詳しくたずねたうえで、様々な症状から総合的に診断します。
以下の診断基準を満たす場合に、咳喘息と診断されます。
診断基準
①喘鳴を伴わない咳が8週間以上続く(聴診器で聞いても呼吸にゼイゼイ、ヒューヒューという音が入らない)
②喘鳴、呼吸困難等を伴う喘息に今までかかったことがない
③8週間以内に上気道炎(風邪)にかかっていない
④気道が過敏になっている
⑤気管支拡張薬が有効な場合
⑥咳を引き起こすアレルギー物質等に反応して咳が出る
⑦胸部レントゲン写真で異常がみつからない
上記①、⑤の二つを満たすことで咳喘息と簡易的に診断することもあります。
咳喘息の検査は咳喘息にかかると痰の中の好酸球(白血球の一種。アレルギー反応に関与する細胞)が多くなるとされているため、痰の状態を調べます。さらに血液検査でハウスダスト・カビ・ダニ等に対するアレルギー反応を確認します。
次回(6月2日)は予防や治療についてお話しします。