「咳喘息」その2

奈良県医師会   岩井 務

 咳喘息の治療には、気管支拡張薬(気管を拡張させて空気の通り道を拡げる薬)や吸入ステロイド薬を使います。気管支拡張薬を使ってある程度治まれば、咳喘息と診断し、吸入ステロイドを使った治療を開始します。

 吸入ステロイド薬は、1000分の1ミリグラム単位の少量でも気道に直接作用して、優れた抗炎症作用を発揮します。全身的な副作用の心配も少なく、長期にわたって用いることができます。抗アレルギーを使用することもあります。最近では吸入ステロイド薬と気管支拡張薬をひとつの薬として配合した喘息治療薬も出ており、こうした薬が処方されることもあります。症状が良くなったからといってすぐに治療を止めてしまうと再発することがあるので、数ヶ月間続けることが大切です。

 また咳喘息はそのまま自然に治ることもありますが、約30%が喘息に移行すると言われています。喘息への移行を食い止めるためにも早い段階で薬を使って、気道の炎症を抑える必要があります。特に吸入ステロイド薬の使用は「咳症状の治療」とともに「喘息への移行を予防する」効果が期待できます。

 咳喘息の日常生活での主な予防と対策は以下のとおりです。

 

風邪やインフエンザに注意

 風邪やインフルエンザにかかると、気道の粘膜が炎症を起こします。その結果、わずかな刺激にも反応し、気道が収縮して咳喘息が起こりやすくなります。風邪の流行シーズンには、外出時はマスクを装着するようしてください。できるだけ人ごみを避け、外から帰ったら、手洗いとうがいを徹底しましょう。

 

喫煙・副流煙(たばこの先端の火のついた部分から立ち上る煙)に気をつける

 たばこの煙は気管支を刺激し、咳の回数を増やします。特にたばこの副流煙は、受動喫煙といって、咳喘息を悪化させる原因になります。患者さん本人の禁煙は当然として、家庭や職場等、周囲の人にも禁煙や分煙を徹底してもらいましょう。

 

飲酒を控える

 アルコールは原則控えることが望ましいでしょう。お酒を飲むと、体の中のアセトアルデヒドという物質ができます。この物質は、気道を収縮させて咳を起こしやすくします。日本人は欧米人に比べてアセトアルデヒドを分解しにくい人が多いため、飲酒の影響を受けやすいと言われています。飲み過ぎに十分注意してください。

 

アレルギーを起こさない環境をつくる

 咳喘息の患者さんにとって、アレルギーを引き起こす原因となるハウスダスト、カビ、ペットの毛、花粉などのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質のこと)の排除は不可欠です。週に数回、布団や枕等の寝具を干したり、室内をこまめに掃除しましょう。

 

気温の変化に気をつける

 急激な気温の変化は、咳喘息の発作を招きます。春や秋は常に気温の変化に注意を払い、外に出る時には服装による温度調節を心掛けましょう。エアコンを使う場合は、室外との温度差を大きくし過ぎないよう注意してください。また室内の温度はいつも一定にしましょう。

 

ストレスをため込まない

 ストレスも、気道を過敏にさせる要因になります。日頃からストレスの原因となる過労を避け、睡眠や休養を十分にとることが大切です。水泳等適度な運動をして、抵抗力をつけることも咳喘息の予防につながります。

 

食生活に注意する

 バランスの良い食生活を心掛けましょう。食物アレルギーのある人は、アレルギーの原因となる食品を避けるようにしてください。食べ過ぎにも注意が必要です。

 

 このように風邪をひいた後等に2週間以上、咳が続くようなら専門医(呼吸器内科、アレルギー科)で詳しく診てもらうことをお勧めします。