キズの手当の基本 その1

奈良県医師会 岩井 佐代子

 ラムズイヤーという 植物をご存じでしょうか?

 Ramb’s ear ― 名前のごとく、子羊の耳のような形の葉っぱが魅力的なハーブです。西洋では昔(今でも?)キズをこの葉っぱで覆って治すという治療法があったそうです。
 白いフワフワの柔らかい毛で被われたシルバーリーフは、確かに 思わず触れてみたくなります。ハーブの一種と聞くとおしゃれだし、体にもよさそうです。

 でも、キズに葉っぱを貼りつけるのは、医者としてはお奨めできません。 

 では、医者がお奨めする正しいキズの治し方とは? 今日はそれについてのお話です。

 

 キズがすみやかに治るためには 、

   ①痛くないようやさしく覆って保護

   ②しっとり適度な湿り気(医学用語で湿潤環境)

     ③バイ菌から守る

 主にこの三つが大切です。

 

 この三つのうち、一番 みなさんがひっかかるのは②の湿り気だと思います。キズは乾かして治したほうがよいと思っている方が多いかもしれませんが、実は違うのです。

 なぜかというと、皮膚にキズができるとキズを治すためにいろんな細胞が登場しますが、この細胞がうまく働くためには、適度な水分と栄養が必要なのです。水分や栄養を 含んだ体液(医学用語で浸出液)が乾燥して、かさぶたになってしまうと 細胞はうまく働けません。体液のもとで細胞がうまく働いて、早くキズが治るようにする治療法を モイストヒーリングといいます。最近、少し高価ですが、このモイストヒーリングをうまく引き出すタイプの絆創膏(ばんそうこう)も 市販されていますね。

 さて次は③のバイ菌 対策。〝すぐ消毒!〟と思いがちですが、実はこの消毒のしすぎがよくないことがあります。そのことについては、次回(7月7日)にお話しいたします。