キズの手当の基本 その2

県医師会   岩井 佐代子

 前回(6月16日)に引き続き、キズの手当てのお話です。ケガをしたら「まず消毒」「とにかく消毒」と思いがちですが、消毒のしすぎもよくないことがあります。

 一般によく使われる市販の消毒薬は、殺菌作用はあるのですが、キズを治すために活躍中の細胞も殺してしまいます。その結果、自然治癒力を邪魔することになり、かえって治りが遅れてしまうことがあるのです。

 また、皮膚の弱い方は消毒薬でかぶれてしまうのも心配です。消毒するより水道水でしっかりキズを洗い、バイ菌を洗い流すようにしたほうがよいのです(特殊な滅菌水や生理食塩水等を使う必要はありません)。

 まとめますと、家でできる軽いキズの正しい手当ては、水道水でよく洗い、キズが乾燥しないよう工夫された 絆創膏(ばんそうこう)やガーゼでやさしく覆う。それを交換するときは、いい細胞までめくりとってしまわないようそっとはがし、水道水やシャワーで洗うようにします。汚れがひどいときは石鹸も使ってください。製品によっては、貼りっぱなしで数日もつと謳(うた)っているものもありますが、どうしてもすき間から水が入ったり、血や体液が漏れ出てきたりすることが多いので、毎日交換したほうがよいかもしれません。交換時、「おかしいな」とか「不安だな」と思ったら、皮膚科か外科を受診してください。

 ここにあげた治療法はあくまで軽い擦りキズや切りキズの話です。縫合(ほうごう)や止血が必要な重症のキズ、異物が刺さった刺傷、強い打撲を受け、裂けたキズ等は必ず専門医を受診してください。糖尿病等、免疫が低下している可能性がある持病をお持ちの方もです。

 前編の「ラムズイヤーを貼る」とか、よくある「アロエを貼る」とか、「イナバの白兎がガマの穂にくるまってキズを癒した」とかいうのは、一種のモイストヒーリングとも言えないこともないですが、感染や植物自体にかぶれるといったおそれがあり、やはり止めたほうがよさそうです。文明の力を借りましょう。私達医師もお手伝いします。