大腸CT検査とは~仮想大腸内視鏡検査~

県医師会  溝上 晴久

 40歳以上の方に「あなたは胃の検査をした事がありますか?」と質問すると、多くの方が胃内視鏡検査又は胃バリウム検査のどちらかを受けた経験があると回答されます。ところが大腸検査は、「検査が痛い」「前処置の下剤が大変」「検査が恥ずかしい」などの理由で受診率がまだまだ低く、進行がんで発見される事が多いのが現状です。

 日本での大腸がんは、女性の部位別がん死亡率第1位、男性では第3位となっております。

本来大腸がんは、早期に発見出来れば内視鏡的切除、腹腔鏡下切除(ふくくうきょうかせつじょ)などの発達により、他のがんと比べむしろ少ない侵襲(しんしゅう)で完治しやすい病気です。

大腸CT検査(仮想大腸内視鏡検査、大腸3D―CT検査)とは、内視鏡を挿入せずにCT撮影を行い、その後コンピューター処理によって内視鏡検査のように大腸を調べることが出来る新しい検査です。最大の特徴は、大腸内視鏡検査と比べて検査が楽という点です。

 日本では、まだ実施できる施設は限られていますが、米国では大腸がん検診ガイドラインにも掲載され、すでに一般化しており、オバマ大統領も大腸CTで検診しているそうです。

 私も昨年、実際に大腸CT検査を受けてみました。以前受けた大腸内視鏡検査に比べて検査時の腹部疼痛(とうつう)がとても少なく、検査時間も10分程度と短時間で終わりました。また、内視鏡検査では検査後の腹部膨満感(ぼうまんかん)が数時間残りましたが、今回は強い膨満感は数分で消失し、すぐに食事も出来ました。

  実際の検査の流れは病院により少し異なりますが、前日から検査食を食べ、少量のバリウムを数回に分けて内服します。そして夕食後から下剤を飲み始めます。検査当日の下剤は無く、食事は出来ませんが、スポーツドリンク、飴玉、ガムなどの摂取は大丈夫です。検査は、まず鎮痙剤(ちんけいざい:腸管の動きを止める薬)を注肩に注射して、その後CT検査台に横になります。肛門に10㎝ほどの細いチューブが入り、そこから大腸を膨(ふく)らませるための炭酸ガスが入ります。炭酸ガスがお腹に十分入った状態で仰向けとうつ伏せで2回撮影をして検査終了です。炭酸ガスは空気と比べ130倍体内への吸収が早い、そのため検査後10分程度でお腹が楽になります。

ただし、すべてが良い事ばかりではありません。

長所は、①検査時の苦痛が少ない、②腸管を傷つけるリスクが少ない、 ③内視鏡が挿入困難な方でも容易、④短時間で終わる、⑤内視鏡で見えにくいひだの裏側もよく見える。

短所は、①平坦病変や小さなポリープの描出が内視鏡に比べて劣る、 ②組織検査が出来ない、 ③病変の色調などが分からない、④被ばく検査であるため妊娠の可能性があると出来ない。

以上、短所もいくつかありますが、排便異常がある方はもちろん、大腸がん家族歴がある方、40歳を越えた方も内視鏡検査に躊躇(ちゅうちょ)されているようなら、一度大腸CT検査を受けてみてはいかがですか?

             
                            写真提供:中井記念病院