―認知症とMCI― 転倒を予防し進行を防ぎましょう

県医師会  竹田 洋祐

 軽度認知障害(Mild Congnitive Impairment以下「MCI」)とは、正常に日常生活を送ることができる人と認知症の間の境界にある状態を表す言葉です。

 認知症は物忘れから始まることが多く、判断能力や言語機能、また目標や計画をたて調節・修正しながら、それを実行し、完結させるなどの正常な認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を言います。 

 一方MCIは、記憶力などが低下しても、日常生活にはほとんど支障をきたさずに自立して生活できる状態です。

 MCIの原因は様々で脳が萎縮(いしゅく)するアルツハイマー病などが始まっている場合から、脳にはあまり障害がみられない場合もあります。

 MCIの人は、正常な人と比べると認知症に進行する可能性が高いと言われていますが、初期の段階で適切な対処をすると、進行を防ぐことができる場合もあります。

 また、MCIの状態から認知症へ移行しやすいかどうかは、専門医の診察や、脳の画像診断などを受けることで、ある程度の予測ができます。それに基づいた対処が必要になりますので、MCIの早い段階で認知機能の低下に気づき、受診することがとても大切と言えます。

 ここまでのお話で認知症とMCIの違いなどはお分かりいただけたと思います。

 次に認知症の人が気をつけたいこととして、転倒による骨折のお話をします。認知症の人は正常な人に比べて、2倍以上も転びやすいと言われています。認知症は高齢者に多いこともありますが、転ぶ原因として認知機能の低下により注意が行き届かないことが挙げられます。特に高齢者は骨そしょう症を生じていることが多く、足の大きな骨である大腿骨(だいたいこつ)を骨折しやすくなります。そして、骨折すると認知機能の低下もあってリハビリ指導の内容の理解が困難で、回復も遅く寝たきりになりやすい傾向があります。つまり転倒の予防が、骨折や認知症への進行を防ぐことにつながります。

 「ボケないように手作業を」ともいいますが、つまずかないように、転倒しないよう、ひいては骨折しないように注意することが大切です。

 特に転倒を起こしやすい場所は、室内のベッド周辺と言われています。つまずきやすい生活上の動線を見直すとともに、段差には注意しましょう。

 また健康状態に応じた筋力の維持なども予防対策となります。

 認知症の予防には周囲の理解や協力が重要です。 ご自身や周囲の方で気になる症状があるときは、かかりつけ医にご相談ください。