県医師会 山科 幸夫
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌:しんきん)の一種が原因でおこる病気です。水虫は足の指の間や裏にできるタイプが最も多いですが、白癬菌はケラチンというタンパク質で育っていきますので、皮膚のほかに髪の毛や爪に入り込んでおこることもあります。なかでも爪の水虫は爪白癬と言われるもので、日本人の10人に1人、60歳以上では約4割の人がかかっていると推定されています。
爪白癬の多くは、足の指の間や裏に水虫があって、それを治療せずに放置しているか、適切な治療を継続していないなどの原因により、白癬菌が爪のまわりから爪の下にもぐりこみ、爪の中にまで進入しておこります。
爪白癬で最も多く見られる初期の症状は、爪の一部が白色や黄色に変色して濁(にご)ってきます。かゆみや痛みはありませんが、放っておくと濁った部分がさらに広がり、爪は厚くなってもろくなります。こうなると、靴を履くときなどに痛みを感じることもあります。
ただ、爪が濁ってくる病気は爪白癬のほかにもありますので、正しく診断する必要があります。爪の濁っている部分の爪を少し削って採取し、顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを検査します。
次に爪白癬の治療ですが、皮膚の水虫と同様、すみついている白癬菌を完全に退治する必要があります。皮膚の水虫の場合は塗り薬が一般的ですが、爪白癬の場合は爪が固く薬の成分が爪の中まで浸透しないため、飲み薬しか治せないと最近まで言われてきました。また飲み薬は、肝障害などの副作用や、飲み合わせがよくない薬があることから、特に慢性疾患などで日頃から複数の薬を服用している方は、使用が制限される場合もありました。
しかしながら最近、薬の開発が進み、塗り薬でも治せるようになりました。1日1回、医師から指示された爪の全体と爪と皮膚の境目に塗ります。治療期間は状態によりますが、だいたい半年から1年程度です。
医師とよく相談して、その状況にあった治療法を決めることが大切です。
また爪白癬の治療は、治ったと思って自己判断で薬をやめず、医師の指示どおりに治療を続けることも大事です。
さらに、爪白癬でボロボロと崩れ落ちる爪のくずの中には、白癬菌がすみついています。この菌が自分自身のほかの部位にくっついたり、家族などの同居している人に水虫をうつしてしまう原因になります。
感染をひろげないためにも、部屋はこまめに掃除をするほか、スリッパや足ふきマットなどは家族と共有しないようにしましょう。また毎日、石けんを使って隅々まで洗うことも大切です。
爪が白く濁っていたら、ぜひ一度、水虫でないかどうか、かかりつけの医師にご相談ください。