県医師会 清益 功浩
肝臓(かんぞう)に炎症を起こすウイルスは現在、A型、B型、C型、D型、E型があり、B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスによって起こす肝炎です。主に血液や体液などを介して感染します。感染すると、約30%の人は、黄疸(おうだん)、発熱、倦怠感(けんたいかん)などの症状を起こす急性肝炎になります。急性肝炎の多くは自然に治ってしまうのですが、約2%に急性肝炎が急速に進行し、肝臓が数日で機能しなくなる劇症(げきしょう)肝炎になることがあります。劇症肝炎の死亡率が70%と重症ですので、予防が望まれます。さらに、肝炎ウイルスに感染した人の10~15%は慢性肝炎や肝細胞がん(肝がん)、肝臓の細胞が炎症で無くなり固くなってしまう肝硬変(かんこうへん)になってしまいます。さらに、B型肝炎ウイルスを持っている女性が妊娠、出産すると、新生児にB型肝炎ウイルスが入り、ウイルスを持ったキャリアーと呼ばれる状態になり、人への感染力を持ち、自らも慢性肝炎、肝細胞がん、肝硬変になってしまう可能性があります。そのキャリアーを予防する方法としてワクチンがあります。
B型肝炎ワクチンとは、B型肝炎の成分を使って免疫をつけるワクチンで、不活化ワクチンの一つです。免疫を高めるためのアジュバントという免疫増強剤にアルミニウムが含まれています。不活化ワクチンですので、通常3回のワクチン接種を必要とします。また、しばらくすると抗体が下がってしまうため、追加のワクチン接種が必要な場合もあります。B型肝炎ウイルスを持った母親から生まれた赤ちゃんには保険診療で予防ができますが、これまで一般的に任意接種として自費になっていました。
しかしながら、このB型肝炎ワクチンが、今年の10月1日から定期接種になりました。対象は平成28年4月1日以後に生まれた生後1歳に至るまでの子どもです。残念ながら定期接種に該当しない子どもは任意接種のままです。
上記のとおり3回接種が必要ですので、1回目を接種してから1ヵ月後に2回目を、それから6ヵ月後に3回目を接種します。接種量は10歳未満で0.25ml、10歳以上で0.5mlです。
副作用としては、接種を受けた10%程度の人に体のだるさ、頭痛、注射部位が赤くなったり、腫れたり、痛くなったりすることがあります。
B型肝炎ワクチンは世界の多くの国、180国以上で定期接種となり、WHO(世界保健機関)は1992年、B型肝炎の感染源の撲滅と肝硬変や肝臓がんなどによる死亡をなくすために、子どもたちに対して、生まれたらすぐにB型肝炎ワクチンを国の定期接種として接種するように指示しています。そして、ほとんどの国で定期接種になっていて、これを「ユニバーサルワクチネーション」と呼んでいて、やっと日本も限定的ですが、定期接種になりました。
B型肝炎のリスクの高い人は、ぜひともB型肝炎ワクチンを受けておきたいものです。