マイコプラズマ肺炎の予防は?

県医師会      清益 功浩

 マイコプラズマ肺炎は、「Mycoplasma pneumoniae」(肺炎マイコプラズマ)という名前の微生物が起こす肺炎です。肺炎マイコプラズマは、細菌より小さくウイルスより大きいため、細菌にもウイルスにもない性質を持って、人の細胞の中でなくても増殖できます。多くの細菌ではその外側に、細胞でいう膜のような壁がありますが、肺炎マイコプラズマには細菌のもつ壁がありません。肺炎マイコプラズマは、口や鼻から体内に侵入して、気管から肺で増殖して、炎症を起こすのが特徴です。そのため、気管支炎や肺炎を起こします。以前は4年に一度の周期で流行し、「オリンピック病」とも呼ばれていました。最近は少しずれていることもありますが、数年おきに流行を繰り返しています。理由は、マイコプラズマに対する免疫は、長くは維持されにくいためです。一度罹ったからと言って、誰しも安心はできません。最近では、2011年、2012年に大流行がありました。

 症状としては、ノドの痛み、鼻水、鼻づまり、発熱、咳、痰のからむ咳、喘鳴(ゼイゼイ・ゴロゴロ・ヒューヒューといった呼吸)、呼吸困難です。特に気管支喘息のある人が感染すると、喘息発作が誘発されます。乳幼児より学童期以降の方で症状がひどくなるのが特徴です。つまり、乳幼児なら風邪程度、学童期以降なら気管支炎、肺炎を起こします。そう多くはありませんが、肺炎だけでなく、脳炎や脳症、下痢や嘔吐などの消化器症状、肝腫大・肝機能異常などの肝炎、じんましんなどの発疹、心筋炎、赤血球が壊れる溶血性貧血などを起こすことがあります。

 早期発見するには、まずはマイコプラズマ肺炎を疑い、医療機関を受診するようにしましょう。医療機関では、まず、簡便な迅速検査があり、咳のひどい時にマイコプラズマ肺炎の迅速検査を行います。肺炎マイコプラズマは主に肺に感染して増え、ノドでは ほとんど増えません。ノドの検査は肺から咳で運ばれた菌を検出しますので、咳がひどくないと検査で陰性になってしまいます。よく使用されているリボテストと呼ばれる検査は、10人の患者さんに対して検査で陽性になるのは7人程度です。

 正確な診断は、肺炎マイコプラズマの遺伝子検査で、LAMP法と呼ばれています。マイコプラズマの遺伝子があるかどうか増やしてみて、増えると陽性だとわかります。ただし、特殊な機械を必要とし、病院外で検査すると時間がかかります。さらに、血液検査による検査として、初期と回復期の抗体を比べて、回復期の方が上昇していれば、マイコプラズマ肺炎だったことが診断できますが、治ってからの診断になります。

 予防と対策は他の風邪などの呼吸器感染症と同じ方法です。①しっかりと手洗いすること、②人混みを避けること、③マスクをすること、④帰宅時にはうがいをすること、⑤屋外と屋内で衣服を替えること、⑥周りの身近な人がマイコプラズマ肺炎と診断されたら、治療を受け、マスクをしておくことなどが有効です。

 できるだけ早期に治療で、抗菌薬はマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌薬が有効です。それ以外は効果がありませんので、適切な治療により、感染拡大と合併症を防ぐことが大切です。