県医師会 清益 功浩
やけど(火傷)は、「熱傷(ねっしょう)」とも言い、熱によって皮膚の組織が傷んでしまう病気です。一般的にはストーブや鍋など高温な機器で起こることが多いです。
やけどは、傷んだ皮膚の状態によって、程度が変わってきます。やけどの範囲が広く、皮膚の深い部分まで傷んでしまうほど、重症になります。皮膚は、三層構造で、皮膚のバリア機能を担う表皮、血管が豊富な真皮、脂肪などを含む皮下組織です。
やけどの程度は、皮膚が傷んだ深さと面積で分類していますが、低温やけどで問題になるのは、やけどの深さです。 やけどは、基本的には体温を超える温度で皮膚の損傷が起こってしまいます。火や熱湯で起こってくる高温のやけどは、表皮から損傷が起こりますが、体温より少し高い程度の低温のやけどは皮下組織で損傷が起こってきます。温度として、60℃で1分間、50℃で3分間、42℃で6時間、接触している皮膚の部分の組織にやけどが起こると言われ、カイロ、湯たんぽ、ホットカーペット、床暖房などの低温の暖房器具などでやけどは起こり、これを「低温やけど」と言います。
・第1度…表皮だけ。赤くなってむくむ。
・第2度…真皮まで。真皮での深さによって浅い浅在性と深い深達性に分かれ、浅在性では赤くなった水疱、深達性では蒼白か赤褐色の水疱になります。
・第3度…皮下組織まで。水疱もなく、皮膚がなくなり、組織が見えている状態。
第2度深達性、第3度になると、やけどの跡が残ってしまう可能性があります。
低温やけどでは、長時間にわたり、熱が皮膚に伝わりますので、血管が豊富な真皮では熱が逃げていくのですが、温度を下げる機能に乏しい皮下組織に損傷が起こりやすくなります。表面上は軽症に見えても、水疱ができたり、色が変わってしまうことがあります。子どもと高齢者では、表皮が薄いために熱が深く伝わり、熱さをあまり感じないために長時間にわたり熱にさらされますので、低温やけどが起こりやすいです。
低温やけどを防ぐためには、カイロ、湯たんぽ、ホットカーペット、床暖房などの低温の暖房器具の正しい使い方を知っておく必要があります。①直接、皮膚に暖房器具をあてない、②暖房器具が皮膚にあたっている場所を圧迫しない、③同じ場所に長時間、暖房器具をあてない、④熱さを少しでも感じたら、その時点で暖房器具を外すまたは離れる、⑤可能なら寝ている時には暖房器具は使用しないなどです。
もし、やけどを起こした場合は、まずは、暖房器具を速やかに外して、水道水などで20分程度冷やします。ただ、低温やけどの場合は、高温より水疱ができていることが多いので、できるだけ水疱をつぶさないように清潔にしておきましょう。やけどの深さが深い場合は、損傷された部分を除去する必要がありますので、皮膚科などの医療機関で診察してもらいましょう。適切な処置によって、やけどの跡が残りにくくなります。