糖尿病重症化予防プログラム

県医師会    赤井 靖宏

 糖尿病患者数は、この50年間で50倍以上に増え、糖尿病はいまや誰もがかかりうる「国民病」です。

 糖尿病は血糖値が上がる病気ですが、血糖が上がって命を失うことはめったにありません。糖尿病患者さんの多くは、血糖が上がった結果起こる合併症で命を失ったり、不自由な生活を余儀なくされたりしています。特に、糖尿病が原因で腎臓が悪くなり、透析や腎移植などの治療を受ける患者さんが増えています。透析患者さんの約45%が糖尿病による腎障害(糖尿病性腎症)が原因で腎不全になったとされています。

 わが国では、健康日本21(第2次)において、糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数の減少等が数値目標として掲げられ、様々な取組が進められています。特に、糖尿病合併症を重症化させない試みとして、厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議が合同で「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を立ち上げ、都道府県、市町村や医師会などが一丸となって糖尿病合併症重症化を予防する取り組みが全国で展開されつつあります。みなさん自身が、糖尿病が重症化しないように気を付けることはないでしょうか?

 まず、糖尿病を早期に発見することが重要です。糖尿病は症状に乏しい病気です。このため、糖尿病の早期発見には定期的な健診受診が非常に重要です。「私は、何も症状がないから大丈夫」と思っていませんか? 症状がなくても健診を毎年受け、糖尿病を早期発見することが重要です。

 それでは、もし糖尿病と診断されたらどうしたら良いでしょうか? 糖尿病は早期治療が重要な病気です。みなさんの中にはお薬をのむことに抵抗があり、食事療法やサプリメントをのんで糖尿病を治そうとされている方はおられませんか? 確かに、食事療法は糖尿病の療養に大変重要ですが、食事療法には栄養士などの専門家からのアドバイスが必要な場合があります。最近も「甘いものを控えて、おかきを食べています」という方がおられました。このような誤った節制はかえって糖尿病の悪化を招くことがあります。最近は、糖尿病の治療薬がずいぶん進歩し、副作用なく治療できる場合が多くなってきました。良好な血糖コントロールは糖尿病合併症を予防します。糖尿病が疑われたら、できるだけ早くかかりつけ医を受診して適切な治療を受け、糖尿病の重症化を予防してください。

 最後に、糖尿病を長く患っていると腎臓障害などの合併症が発病することがあります。この場合も「早期発見・早期治療」が重要です。糖尿病性腎症では早期に微量なタンパクが尿に漏れ出します。これを「微量アルブミン尿」と言います。このような軽い腎臓障害の段階で合併症が発見されると、腎臓障害の悪化を防ぐことができます。糖尿病を患っておられるみなさんは、年に1回は尿検査(微量アルブミン尿検査)を受けて糖尿病合併症を予防していただきたいと思います。同時に定期的に眼科も受診し、眼の合併症(糖尿病網膜症)にも気をつけましょう。

 みなさんは、糖尿病重症化予防プログラムのお世話になる前に、自分で頑張れるところは頑張って、糖尿病やその合併症を予防してください。