受けていますか? 大腸がん検診 ―大腸内視鏡施行医の立場からー

 県医師会   橋本 恵介

 がんの中で大腸がんの割合は徐々に増えてきています。部位別がん罹患数では、男性が第3位・女性が第2位(女性は胃がんを抜いています)で、部位別がん死亡者数に至っては、女性が第1位、男性が第3位です。今や、3人に1人ががんになる時代と言われており、他人事とは到底思えません。どのがんもそうですが、早く見つければ根治できるのです。特に大腸がんは、早期発見しやすいがんなのです。

 大腸がん検診には、皆さんもご存じの通り、便潜血反応検査があります。この簡易的な大腸がん検診でさえ受診率は約25%程度(国は50%を目標にしています)にとどまっています。さらにこの検査で、便潜血反応が陽性であるにもかかわらず、精密検査である大腸内視鏡検査を受ける率は60%程度です。

 まず、便潜血反応検査についてですが、この検査はかなりアバウトな検査だと思ってください。検診で用いられている理由は、検査の簡便さ、コスト面などを考えた場合、他にあまりいい方法がないからだと思われます。便潜血反応では、大腸がん的中率は約3%程度だと言われています。進行がんの患者さんでも約10%が便潜血陽性にならず見逃され、早期がんに至っては約50%程度も見逃されている状態です。仮に自分が大腸がんであるにもかかわらず、便潜血反応が陰性のため、大腸内視鏡検査を受けなかった時のことを考えると、ぞっとしませんか? 本来なら大腸がん検診は、もう少し精度の高いものが必要だと思います。

 では、大腸CT検査や大腸カプセル内視鏡検査はどうでしょう? これらを検診に用いるならば、かなり精度が高くなり、非常にいいことだと思われます。将来的には、大腸がん検診に大腸CT検査やカプセル内視鏡の時代が来るかもしれません。「じゃあ、その時まで待っている」という方もおられるでしょう。でも、その中には放置しておいてはいけない方もおられるはずです。これらの検査が検診に取り入れられるまでには、まだまだ時間がかかることでしょう。

 大腸の精密検査は、大腸内視鏡検査が最も精度の高い検査(厚生労働省のガイドラインにも掲載れています)であることは皆さんもご存じのはずです。では、なぜ大腸内視鏡検査が敬遠されるのでしょう。検査がこわい・痛いに違いない・恥ずかしい・症状もないしリスクは低いから自分は大丈夫・仕事を休んでまで受けたくない・受けられる病院が遠い・コストもかかる、などが大きな理由だと思もわれます。我々大腸内視鏡施行医は、40歳を超えた方は、一度大腸内視鏡検査を受けたほうがよいと考えています。血便・便秘・腹痛などの自覚症状のある方、がん家系の方などは、ぜひ大腸内視鏡検査を受けてみてはどうでしょう。

 「それじゃ、誰に相談して、どこで大腸内視鏡を受ければいいのか」ということになります。最終的には、「どこで、誰が、正確で安全に、楽にやってくれるのだ」と言うことです。我々が思うに、ある程度症例数をこなした経験のある先生ならば、そんなに大きな差はないと思います。(大きな病院の先生だけでなく、最近では大腸内視鏡をされるクリニックでも、お上手な先生がたくさんおられます。)

 大腸がん検診で異常を指摘された方や大腸内視鏡検査を少しでも考えておられる方は、早期発見のために、あまりこわがらず、消化器内科医、あるいは近くの先生に相談してみてはいかがでしょう?