県医師会 竹田 洋祐
近年、熱中症が増加しています。熱中症は夏の強い日射しの下で激しい運動や作業をする時だけでなく、身体が暑さに慣れない梅雨明けの時期にも、また屋外だけでなく高温多湿の室内で過ごしている時にも起こります。
初期症状は立ちくらみ、こむら返り、手足のしびれ、気分不良ですが、次にズキンズキンとする頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感があらわれます。
さらに重症になると呼びかけても応答が異常になったり、反応しない等の意識障害や高体温(皮膚を触ると、とても熱い)を認めます。
熱中症が疑われる人がいる場合は、ただちに風通しの良い日陰や、クーラーが効いている室内に移し、衣類を脱がせ皮膚を冷たいタオルでふいて、うちわや扇風機などであおいだり、氷嚢(ひょうのう)で首やわきの下、太ももの付け根を冷やし、できるだけ体内の熱を外に出します。
回復が思わしくない時は命に関わることもありますので医療機関へ搬送することになります。
熱中症では体温上昇につれ大量に発汗したあと、脱水症となり、汗もかかなくなります。 かくれ脱水症は本人が気づかないうちに体内の水分が足りなくなる状態をいい、お年寄りに起こりやすいものですが、若い人でも、夏バテや二日酔いのときに起こります。
かくれ脱水症は自分でも簡単にチェックできます。
まず、手の甲をハンカチを拾うように軽くつまみあげ、すぐに離してみます。つまんだ跡が消えるまでに3秒以上かかると、かくれ脱水の可能性があります。これで自分だけではなく、様子がおかしいと思った他の人の状態も確認することができます。
大人より新陳代謝が活発で体温が高い乳児や幼児は、汗腺の発達が十分でなく体温調節がうまくできません。炎天下の車の中など、体温よりも周囲の温度が高くなる場所では、短時間で体温が上昇し、生命に危険が及びます。
お年寄りは体内に水分を蓄える力が衰えるうえ、トイレの回数を抑えようと水分を控えたりすることから、熱中症にかかり易くなるといわれております。また、高齢者は身体の中の水分の割合が少なく、同じ環境にいても熱中症になりやすくなります。 加えて高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、水分を十分に摂らない傾向があります。また心臓や腎臓の機能が低下しがちなため、熱中症になった時の症状はより重篤です。
このように乳幼児や高齢者は、体質的に熱中症を起こしやすく、日頃からこまめに水分補給(麦茶・経口補水液など)を心がけましょう。特に暑い日や梅雨明けには十分に水分・塩分をとって熱中症(脱水症)を予防しましょう。