県医師会 清益 功浩
気象の変化によって症状などが悪化する病気を「気象病」と呼びます。めまい・狭心症・低血圧・喘息(ぜんそく)・うつ病などのもともとの病気があって、気象の変化で悪化することを含みます。気象病の中に、天気痛と言って、天気によって出たり消えたりする痛みがあります。これは、普段から痛みの原因を持っている人で、頭痛・首や肩の痛み・関節痛・交通事故のあとのムチウチの痛み・過去の怪我や手術による傷あとの痛みなどが、気圧が低くなることで悪 化します。例えば、関節リウマチの患者では気圧の変化と関節の痛み・腫れは関係しているといった報告があります(京都大学の疫学研究)。
気象病と呼ばれる病気の原因は、心理的ストレスを含めて、私たちの意志とは関係なく働いている「自律神経」にあると言われています。この自律神経には、心身の活動を高め、痛みにも関与している「交感神経」と心身を休める「副交感神経」のふたつがあります。気象の変化でふたつの神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になると、頭痛などが起こります。天気痛の原因は、気圧の低下が身体のバランスや聴覚に関係する内耳の気圧センサーで感知され、交感神経が優位になって、痛みが生じると言われています。
治療は、めまい・狭心症・低血圧・喘息・うつ病といったもともとの病気があれば、しっかりとその病気を治療することが重要です。さらに、気象の変化によって悪化した場合は、天気痛の原因は耳にありますので、めまいなどの症状に対しては内耳に作用する薬、乗り物酔い止めのような薬を使用します。気象病の治療は、可能であれば症状が軽いうちから行った方がよいでしょう。
予防は、もともとの病気をしっかりと治療しておくことで予防できます。天気痛は気圧の低下が原因ですから、自分の痛みと気圧の変化を普段から知っておくことが重要です。そのために、天気と自分の痛みを日記のように記録しておくとよいでしょう。気圧の変化は天気に左右されます。晴天時には高気圧ですし、雨天時には低気圧です。さらに、雷雨・豪雨・台風などでは気圧はかなり下がっています。こうした天気の変化が気圧の変化を起こします。低血圧が予想される場合は、できれば外出を控えた方がよいでしょう。痛みはいつ来るかわからないので、その痛みに対する不安がストレスとなり、さらに痛みが増します。普段は天気予報に注意して、自分の痛みのある日を知っておきましょう。部屋の気圧を少し上げる治療をすることで、天気痛がよくなることがありますが、自宅で気圧を上げるということは簡単にできないので、この治療は現時点では一部の施設のみで行われています。
天気痛をチェックする方法として、東京スカイツリー、東京タワー、あべのハルカス、タワーマンションなどのエレベーターの昇降による気圧の変化で、頭痛やめまいが出てくることがあれば、天気痛かもしれません。
秋は台風の通過などで、気圧の変動が多くなり、天気痛、気象病の症状がみられることがありますから、めまいの薬や鎮痛薬などを事前に用意しておきたいものです。