県医師会 清益 功浩
乳児期にRSウイルスにかかった子供は、喘息を発症することが報告されています。RSウイルスがアレルギー疾患を発症しやすい免疫状態にし、特に、子供の早い時期に細気管支炎という非常に細い気管支の炎症を起こすと、5年後に気道が過敏になりやすく、喘息になりやすいとの報告もあります。さらに、スウェーデンの報告では、3歳までにRSウイルスによる細気管支炎にかかると、7歳半までの喘息になる可能性が10倍以上になるといわれています(Sigursらの報告)。
そもそも、RSウイルスとはどんなウイルスでどのような感染症でしょうか? RSウイルスはRespiratory syncytial virusを略したウイルスです。感染すると気道の細胞がくっついて合わさってしまうから、このような名前がつきました。RSウイルスは、気道に感染し、感染する場所によって病気が異なります。ノドであれば上気道炎、咽頭炎、気管支であれば気管支炎、気管支から肺の間の細気管支であれば細気管支炎、肺であれば肺炎になります。主な症状は、発熱、咳、鼻水、鼻づまり、ゼイゼイ、ヒューヒューと言った喘鳴、時に、呼吸がしにくくなる呼吸困難を起こします。大人や学童では、鼻水、咳などの症状で、風邪と診断されることが多いです。しかし、乳幼児に感染すると、細気管支炎になり、呼吸困難を起こし、重症になります。予定日より早く産まれた早産児、生まれつき心臓の病気のある子どもでRSウイルス感染を起こすと重症化することが多いです。
RSウイルスによる感染を診断するには、鼻を綿棒でこすって行う検査があります。検査キットを使用して、約30分程度で判明します。ただし、外来診察では1歳未満でないと保険診療ができません。
治療方法は、ウイルスに対する特効薬はありません。症状に応じた治療が行われます。吸入、酸素投与、咳、鼻水などの症状を軽減させる薬で、重症化した場合は、人工呼吸器による治療が行われます。予定日より早く産まれた早産児、生まれつき心臓の病気のある子どもでは重症化しやすいため、パリビズマブ(シナジス)という薬が使われています。パリビズマブ(シナジス)は、RSウイルス粒子表面のあるタンパク質を特異的に結合する免疫グロブリンで非常に高価な薬ですので、誰にでも使える薬ではありません。
そのため予防が大切で、家族全員で手洗いをしましょう。親子ともに、かぜをひいた人との接触を避けます。1歳以下の乳児にいかに感染させないようにするかが重要なポイントになります。特に、RSウイルス流行期(10月頃から2月頃、最近は7月頃から流行し始めることも)には、乳児を連れて、人の出入りの多い場所、保育園、学童や幼稚園児との接触するような場所をできれば避けましょう。兄弟姉妹の風邪には注意したいものです。さらにタバコの煙は子どもの症状を悪化させますので、子どものいる場所での喫煙は止めましょう。