県医師会 井村 龍麿
高齢化の影響もあり、認知症にかかる人はどんどん増加しています。実際に日常でも認知症にかかった人と接することは、決して珍しく無くなっています。それだけに「自分は認知症にならないだろうか?」「最近、物忘れが多いが、認知症ではないだろうか?」といった不安を持つ人が多く、実際よく質問されることがあります。その不安はもっともな事だと思います。でも安心してください、単なる物忘れと認知症とは全く違うものです。
そもそも認知症とは、脳自体が萎縮していく病気ですので、進行すると食べたり、話をすることからトイレをすることまで、あらゆる生活に障害が出てきます。一般的に認知症の初期の頃は、記憶の障害から始まり、同じことを何度も聞いたり、繰り返したりすることで発見されます。
では、単なる物忘れと認知症とはどのようにして区別できるのでしょうか。一つの判断方法としては、注意力の低下に伴うものでないかと考えてみることです。例えば、外出先で家のカギを閉め忘れてないか、心配になった時には「最近どうも物忘れが増えた。認知症ではないか」と心配されないですか? 実は、これは単なる物忘れです。忙しくしている時や、何か考えごとをしながらしていると、意識が集中していないために、後から思い出せないことは誰でもあることです。
認知症の場合には最近(数分~数日前に)体験した出来事をきれいさっぱり忘れてしまいます。例えば、その日に食べた食事のメニューまで細かくは思い出さなくても、食べたことをさっぱり忘れてしまって「ご飯はまだか?」と連日聞き返すような場合は注意が必要です。
また、同様に最近の体験した出来事でも、特別なことをすっかり忘れてしまうような場合は特に認知症を強く疑わなければいけません。
―例えば、何十年かぶりに同窓会があり、旧友と1日楽しく話に華を咲かせたにも関わらず(典型的な認知症では、昔の若かりし日のことは鮮明に覚えている場合が多いので、昔の話ならば繋がることがあります)数日後には同窓会に行ったことも忘れている―
もし、このように出来事をすっかり忘れてしまうような場面を見かけた際には、医療機関に相談するように勧めてください。