弱視と子供の眼鏡

県医師会  大萩   豊

 弱視と言えばどのようなイメージですか? 視力の悪い人などでしょうか。病気の原因を問わず視力が悪い状態を社会的弱視というのに対して、生後から6歳頃までの視力が発達する時期に、強い遠視などの原因で視力の発達が止まってしまった状態を医学的弱視といいます。この弱視は適切な時期に発見して治療すれば、眼鏡をかけて良好な視力が得られることが多い一方、幼少期に気付かなかった場合、眼鏡をかけても視力は不良となり、運転免許が取得できないことや職種によっては就職が制限されることもあります。

 そのため平成2年から3歳児健診に視力検査が追加されました。3歳半頃の子供の視力検査では、落ち着きなく測れないこともあります。一方で保育園、幼稚園でも眼鏡をかけている子供をみかけます。まだ小さい子供にこれらの検査、眼鏡は必要なのでしょうか。

 乳児の視力を通常の方法で測ることはできませんが、他の検査方法から推定すると生後3か月で0.02~0.03、8か月で0.1程度、1歳で0.2前後に発達します。そして毎日ものを見て、網膜が鮮明な映像を得て、脳に伝わることで視力は発達していき、3歳半で0.7~1.0に達するといわれています。

 この視力の発達を妨げる原因として、強い遠視や乱視(屈折異常弱視)、片眼の強い遠視や乱視(不同視弱視)、片眼の視線がずれている(斜視弱視)、生まれつき水晶体が濁っている先天性白内障やまぶたが下がっている眼瞼下垂、長期間の眼帯などで視界を遮っている場合(視性刺激遮断弱視)があります。

 弱視は6歳頃までの視力が発達する時期に発見して、遠視や斜視などの原因を早期に矯正、治療すれば十分な矯正視力まで発達できる可能性が高くなります。眼鏡をかけるだけで弱視にならないことも多く、気付かずに治療しないのは本当にもったいないことです。

 眼鏡については、平成18年4月より9歳未満で斜視・弱視などの治療目的に作る眼鏡の費用が健康保健の適応となりました。限度額がありますが、かかった費用の8割もしくは7割が還付されます。また発見が遅く、6歳以降から治療した場合でも視力は改善することがあります。

 もし体の発達が2歳で止まってしまったら、周りの大人が気付きますが、視力の発達が止まっても、なかなか気付かないものです。本人も視力が下がったわけではないので気付きません。そのため視力の発達を知るのに3歳児健診はとても大切な健診です。実際の健診では簡易視力表を用いて、ご家庭で視力検査を行います。そして見えていなかった場合は健診会場での2次検査、眼科での3次検査となります。

 また3歳児健診の前でも、日常生活で見えていないと思われる時や、片眼の視線がずれていると感じる時は早めに眼科を受診されることをおすすめします。