「心原性脳梗塞」を予防しましょう

県医師会 竹田洋祐

  脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり血液で詰まり、脳細胞に酸素や栄養が送れなくなる状態を言います。

 その中でも心原性脳梗塞とは心臓でできたゴミ(血栓)が血管を流れ脳にたどり着き、脳の血管が詰まってしまう病気です。脳梗塞のなかでも最も重症で、たとえ一命を取り留めても、寝たきりになったり介助なしでは歩けないといった後遺症を引き起こします。心臓は筋肉(心筋)からできた袋のような臓器で、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋に分かれています。正常では心筋が縮んでポンプのように働くことによって、血液が全身に規則正しく循環します。しかし心房筋がうまく動かず通常の5倍から10倍の速さで細かく震え不整脈が起こるのが心房細動です。心房細動になると、心房が麻痺(まひ)した状態で血液がスムーズに流れていかず心臓のなかで血栓ができやすくなります。この血栓が脳に移動することで、突然半身麻痺や失語(ことばを忘れたり、正しく話せない状態)、意識障害などの症状が出てきます。

 心房細動が起こったとしても、通常、心室は心房より遅いリズムで動きますから、動悸を生じることはあっても生命の問題にはなりません。健康な人でも、60歳以下では心房細動はまれですが、高齢になれば5%くらいに見られ、年齢が高くなるにつれて、さらに増加するという調査結果があります。心臓の弁の異常や動脈硬化、心不全がある患者さんでは心房細動が起こりやすく注意が必要です。

 心房細動の自覚症状は、胸がドキドキする、胸苦しい、息切れなど、他の病気でも見られる症状であるため自分では判断できません。全く自覚症状が無い方もいますので、高齢になれば心電図検査を受けましょう。

 心原性脳梗塞の予防には血栓ができないようにすることが重要で、血栓を防ぐ抗血小板薬、抗凝固剤らの飲み薬が有効です。また脱水症にならないよう注意しましょう。

 最近では、心房細動の治療に心臓の壁の一部を電気で焼き、小さなやけどを作ったり凍結させることによって組織を壊死させ、心房細動の原因となる異常な電気信号の発生源を切り離す治療法(アブレーション)が行われるようになってきました。「アブレーション」治療が成功すれば、心房細動を完治させることができ、脳梗塞を防ぐことができます。

 自宅で血圧を測っている方で、脈音が不規則でしたら心房細動の疑いもありますので、かかりつけの医師にご相談ください。