県医師会 赤井靖宏
わが国では糖尿病が猛威を振るっています。糖尿病患者数は50年前の50倍に増えています。また、厚生労働省は、2016年には「糖尿病が強く疑われるもの」がはじめて1,000万人を超えたことを発表しました。もっと大きな問題は、これらの「糖尿病が強く疑われるもの」の多くが糖尿病であることを知らなかったり、適正な治療を受けていなかったりすることです。糖尿病の初期には全く症状がないために、健診などを受けないと糖尿病があるかどうかわかりません。糖尿病を心配されていない皆さんも、必ず年に1回は健診を受けて知らぬ間に糖尿病になっていないか調べる必要があります。
それでは、糖尿病にならないためにはどうすればいいでしょうか? 糖尿病にならないためには毎日の生活が大変重要です。適正な食事や運動は、糖尿病発症を約40%低下させることがわかっています。また、肥満にならないようにすることも大事です。肥満を予防するポイントは、毎日体重を測ることです。体重の増減で食事内容を毎日調整し、適正な運動を行えば、大きく体重が増加することがなく、肥満を予防することができます。
残念ながら糖尿病になってしまった場合もがっかりしてはいけません。糖尿病は初期の治療が最も重要です。かかりつけの医師から治療を勧められたときには、すぐに治療を始めて下さい。ここで「薬をのむと一生ものだから…」などと考えてはいけません。糖尿病は早期に治療すればお薬を途中でやめることができる可能性もあります。治療が遅れると、より多くのお薬が必要になり、医療費が高くなります。糖尿病と診断されたら、一刻も早く治療を受けてください。糖尿病治療の目的は、糖尿病の合併症を予防して糖尿病でない方と同じような健康長寿を達成することです。糖尿病合併症の予防にも、糖尿病を早く診断して早く治療することが大切です。現在は、副作用の少ない糖尿病治療薬がたくさん開発されています。ぜひ早めの治療で糖尿病が悪くならないようにしていただきたいと思います。