県医師会 井村 龍麿
オピオイド鎮痛薬とは、いわゆる医療用麻薬のことで一般的に多くは、がんの鎮痛目的に医師より処方される薬です。本文を読まれているほとんどの方にとって、現状はかかわりのない薬だと思いますが、医療用麻薬については身近な薬でないだけに、大きく誤解をされていることが多いのです。自らや身内の方で必要になったときに少しでも困らないように、事前に知っておいてもらう為にも簡単に紹介しておきます。
オピオイド鎮痛薬の大きな誤解を三つ取り上げます。
まず一つ大事なことは「命を縮める」ことや「最後の手段」ではありません。単に効果の強い鎮痛薬だと思ってください。癌治療の妨げにもなりませんので、医師からオピオイドを勧められても、いよいよ最後と思う必要はありません。
次に二つ目は、治療目的での使用にあたって中毒や依存、耐性等の心配はありません。安全に継続して使用ができると思ってください。
最後に三つ目は、オピオイドの使用にあたっては嘔気(おうき)や便秘、眠気等の副作用が開始初期には起こりやすいのですが、適切な知識や対策により安全な継続が可能です。
あと必ず守っていただくこととして、オピオイド鎮痛薬は医療用ですが、麻薬ですので、家族、友人等へ譲り渡すことは、医学的に危険であるばかりでなく、譲り渡した患者自身が「麻薬及び向精神薬取締法」に違反することになるので、絶対にしないようにしてください。
剤型も内服以外にもテープ剤や座薬、注射薬等、多数の中から選択が可能で、病状に合った薬を医師が選択します。
実際に処方を受けられる前には、詳細を専門の医師や薬剤師に十分に聞くようにしてください。しっかりと理解をしておけば、医療用麻薬と上手に付き合っていくことが可能です。誰もが病気になった時、苦しみを少しでも減らしたいと思うものです。医療用麻薬はだれもが身近に緩和治療を受けられる為に、非常に大切な薬です。誤解を減らし、適切なタイミングで適切な使用を受けられることが望まれます。