なぜ人間は痛風になる?

県医師会 赤井 靖宏

 痛風は足の親趾関節によく起きる関節炎です。痛風になって痛みに苦しまれた方も多いのではないでしょうか。痛風は「尿酸」という物質が引き起こすこことは御存知と思います。痛風はどんな動物でもなるのでしょうか。みなさんが飼われているペットが痛風になった話はあまり聞きませんね。それもそのはず、実は、人間は痛風になりやすい動物なのです。主に肝臓で作られる尿酸は、ヒト以外の動物ではウリカーゼという酵素で分解されます。ところが1500万年くらい前に、ヒトを含む類人猿は、尿酸を分解するウリカーゼを持たなくなってしまいました。この結果、ヒトの血中にはたくさんの尿酸が存在するようになったと考えられています。なぜヒトがウリカーゼをなくしてしまったかはよくわかっていません。尿酸は痛風を起こすため悪者のように扱われるのですが、体の中でいいこともしていると考えられています。例えば、尿酸は体の中の物質が過剰に酸化されないように働き、体を守っていると考えられています。物質が過剰に酸化されないようにする物質としてビタミンCが知られていますが、ヒトの祖先はビタミンCを作る酵素を4000万年前になくしてしまい、体内でビタミンCを合成できなくなりました。この結果、尿酸が酸化を防ぐ物質として体の中に増えたのではないかとも考えられています。

 痛風になった方はプリン体を制限するようにかかりつけの先生から指示されたのではないでしょうか。確かに、プリン体を制限することで尿酸値を下げることができます。しかし、尿酸の90%は肝臓で作られているので、食事による尿酸の割合は1割程度ということになります。1割しかないといっても、痛風になった方は食事療法が重要で、プリン体の多い食品は避けた方が賢明です。尿酸はそのほとんどが尿から排泄されます。その結果、腎臓が悪くなると尿酸値に大きく影響し、尿酸値が高くなります。

 尿酸は痛風を起こすだけでなく、動脈硬化や生活習慣病と関連するのではないかと考えられています。症状がなくとも、尿酸が高い方はぜひかかりつけの先生を受診して必要な指導・治療を受けて下さい。