肌荒れ

 県医師会    中農 昌子

 冬は空気が乾燥する、肌荒れを起こしやすい季節です。肌(皮膚)というのは、体を外界から守る「バリア」の役割をしています。体内の水分やたんぱく質が出ていくことを防ぎ、外から有害な物質(汚れ、ダニ、細菌など)が体内に侵入することを防いでいます。荒れた皮膚では体の水分がどんどん外に出てカサカサの肌になり、ウイルスなど有害な物質の侵入により皮膚が炎症をおこすこともあります。炎症が起きた皮膚はかゆくなり、かくことで皮膚の表面はさらにガサガサになるという悪循環に陥ります。湿疹もひどくなれば、かゆみのために夜ぐっすり眠れないことも多く、とてもつらい状況です。

 荒れた皮膚を改善し、それを維持する方法は「スキンケア」です。清潔にして保湿すること、そして炎症があれば炎症を抑えることです。

 清潔に、といっても洗浄力の強すぎる洗剤や、高い温度のお湯で洗うと、皮膚に必要な皮脂をとりすぎてしまいます。適度な洗浄力の石鹸を泡だて使用してぬるいお湯で洗い流し、皮膚が乾燥する前に保湿します。保湿剤にはローションやクリームなど色々な使用感のものがありますので、好みや季節によって使い分けると良いでしょう。

 そして炎症があれば、ステロイドのぬり薬など炎症を抑える薬が有効です。使用を急に中止して皮膚炎がぶり返すことのないように、炎症のおさまり具合をみながらゆっくり薬を減らすこともポイントです。一緒に使用方法を考えていくことができる、かかりつけ医がいると良いと思います。

 そして、肌荒れの中でも特に子どもの肌荒れについて。最近、赤ちゃんの皮膚の状態を良くすることは、他のアレルギー疾患(食物アレルギーなど)を起こしにくくすることがわかってきました。

 その理由ですが、湿疹がある赤ちゃんにみられやすい食物アレルギーの発症に「経皮感作」という病態が大きく関わっているからです。口から食べていなくても、例えば大人が卵を触った手で子どもの肌を触ると、子どもの皮膚から卵のタンパクは体内に侵入します。湿疹があると、物質が侵入しやすい状態にあります。こうした経緯で皮膚から体内に侵入(皮膚を経て侵入する、経皮という状態です)してきた食物を異物と認識し、体内で抗体を作ってしまい(抗体ができることを感作といいます)、離乳食で口から食べた時にアレルギー反応を起こすという流れです。2、3歳の食物アレルギーのお子さんは、赤ちゃんだった時に湿疹があった割合が多いことも明らかになっています。ですので、赤ちゃんの肌をスベスベの良い状態に保ち、皮膚からの食物の侵入を防ぐことが食物アレルギーの予防になります。

 肌の状態がよくないことについて、他の病気に比べるとどうしても後回しに考えがちですが、肌を良い状態に保つことは外見上の問題だけではなく健康であるためにも大切です。気になることがあれば、医療機関で相談すると良いでしょう。