県医師会 山下 圭造
皆さんは、自分の血圧がどの程度であるかをご存知ですか? 健康診断や病院の診察室あるいは公共施設のロビーなどに設置された自動血圧計で何度か測ったことがあると思います。「測るたびに数値がバラバラで信用できない」と感じたことは無いでしょうか? 実は血圧が大きく変化する人は注意が必要なのです。
血圧は、ストレスや喫煙、日常の行動や環境など、様々な影響を受けて大きく変動します。しかし、健常人の場合、その変動はほぼ一定の範囲内にあり、安静時では最大血圧は100〜140、最小血圧は60〜90mmHgとされ、たとえ一時的に大きく変化しても、短時間で回復する機能が備わっているのです。
一方、高血圧の人では安静時の血圧が高いのはもちろんですが、様々な条件で血圧はより大きく変動し、回復にも時間がかかることが多くなります。そして、この変動が大きい人ほど脳卒中や心筋梗塞等の発病リスクが高く、死亡率も高いことがわかってきました。
人間の体は数十兆の細胞でできていて、それぞれの細胞が栄養や酸素を必要とし、不要な物質を排出しています。生命を維持するためには、全ての細胞を連絡するライフラインが必要になってきます。人体では、神経系は送電線、血管系が上下水道、心臓は給水ポンプ、血圧は給水圧に例えることができます。体の一部で多くの栄養や酸素が必要となれば、心臓は、瞬時にポンプの機能を上げ、圧力(血圧)を上げて血液を供給し、やがて需要が低下すれば速やかに回復します。若年者や健常な人は低圧でもスムーズに、必要に応じた血液を送ることができるのですが、年齢を重ねると血管の壁は弾力性を失い(動脈硬化)、やがて十分な血液を送るためには高い圧力が必要になってくるのです。ストレスや環境の変化等のために多くの血液需要が生ずると、より高圧で心臓は血液を送ろうとしますが、対応できないとさらに大きな要求指令が心臓に伝わり、血圧は著しい上昇を来すという悪循環に陥るのです。
近年、我が国では家庭血圧計が広く普及しており、血圧の変動について多くのことがわかってきました。比較的短期の変動(ストレス、運動、ヒートショックなど)、日内変動(早朝高血圧や夜間高血圧など)、測定場所による変動(白衣高血圧、仮面高血圧など)が挙げられますが、いずれに於いても血圧変動が大きいほど注意が必要です。変動大とする具体的な基準は、現在まだ示されていませんが、正確な家庭血圧の測定と記録をした上でかかりつけの医師に相談してください。
ライフラインの老朽化は、突然水道管の破裂を引き起こし、日常生活を大混乱させます。我々の体に起こると脳卒中や心筋梗塞となるのです。自分の血圧を把握し、予防することが大切です。