アルコール性肝障害

県医師会 増井 一弘

 春は歓送迎会やお花見など飲酒の機会がふえる時期ですが、皆様の体調はいかがでしょうか? アルコールは少量では肝臓を傷めることは少ないですが、日本酒換算で1日3合・ビール大ビン3本・ウイスキーシングル6杯以上のアルコールを5年以上にわたって摂取すると、様々な障害が起こってきます。

 アルコール性肝障害には、①アルコール性脂肪肝、②アルコール性肝線維症、③アルコール性肝炎、④アルコール性肝硬変、⑤アルコール性肝癌に分類されます。

 ①アルコール性脂肪肝は、アルコール摂取により、脂肪酸、中性脂肪が増加し、肝細胞に脂肪が沈着する状態で、多量飲酒によりほぼ必然的に発症しますが、3~4週間の禁酒により改善します。

 ②アルコール性肝線維症は、慢性飲酒によりコラーゲン産生が起こり、脂肪変性や炎症が軽度で線維化が生じる状態です。肝炎や肝細胞壊死(細胞が壊れること)は軽度で、禁酒により肝機能は改善します。

 ③アルコール性肝炎は、アルコール性脂肪肝・肝線維症・肝硬変の患者さんなど、慢性飲酒者がさらに多量の飲酒した際に起こり、肝細胞が変性・壊死を起こし、肝機能障害・腹痛・黄疸・発熱・白血球増加などの症状が出ます。また、通常は禁酒により改善しますが、重症化し、消化管出血、腎不全、重篤な感染症を起こすと、1か月以内に死亡することがあります。

 ④アルコール性肝硬変は、アルコール性肝障害の終末像で、慢性の肝細胞が壊れる肝障害により肝臓の再生の際にコラーゲン線維が増生し、肝臓が固くなり、肝機能が低下する状態で、アルコール性肝炎やアルコール性肝線維症から進展します。肝硬変になっても飲酒を続け病態が進行すると、腹水、黄疸、肝性脳症などの肝不全が生じますが、症状のない状態で、禁酒をすると、正常までには改善しませんが、病状の進行は抑制できます。

 ⑤アルコール性肝癌は、肝細胞の傷害と再生を繰り返す過程で癌細胞が発生し、次第に大きくなっていくため、専門的な診断および、治療が必要になります。アルコール性肝癌の危険因子としては、66歳以上、男性、糖尿病合併者に発症しやすいと言われ、肝癌と診断されると、早急に専門的な診断や治療が必要です。肝癌以外のいずれの病態は、まずは、最寄りの医療機関での飲酒量軽減、適量飲酒(節酒)指導を受けて頂きます。しかし、最寄りの医療機関での指導治療困難例や、断酒が必要な方には、専門医療機関でのカウンセリング等の治療が必要となります。アルコールは、日本酒1合・ビール大ビン1本・ウイスキーシングル2杯目までの適量では、ストレス解消作用が報告されていますが、飲酒量が増えることによって様々な病気を発症しますので、適切な飲酒量を守り、健全な生活習慣を送ってください。