県医師会 村井 孝行
皆様が心待ちにしていた長期休暇のゴールデンウィークも、はや2週間を過ぎようとしています。ゴールデンウィーク明けの今頃から〝体の不調〟だけでなく〝心の疲れ〟を感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
例えば「体がだるい」「食欲がない」「気分が悪い」「眠れない」「朝なかなか起きられない」「気が重い」「やる気が出ない」などの症状です。この様な症状のために、次第に学校や会社を休みがちとなっていませんか? そして、全く行けなくなってしまっていないでしょうか?
この様な方は、俗に言う魔の「5月病」を患っている可能性があります。5月病とは言いますが、正式な病名ではなく、少し専門的になるかもしれませんが、医学的には「不眠症」「適応障害」「発達障害」「パニック障害」「うつ病」などの精神科的な病気が隠れていることがあります。これらの病気の中では適応障害が一番多いのですが、うつ病が最も深刻な病気です。なぜだかお解りになりますでしょうか?
厚生労働省による平成26年の調査で、うつ病の患者さんは約70万人にもおよび、近年増加の一途をたどっていることがわかっています。うつ病は、誰にでも起こりえる身近な病気であり、また、本人しかわからない〝言いようのない本当につらい気分・気持ち〟が、一時的なものではなく、ほぼ毎日一日中、そして、数週間どころか数ヶ月間もずっと続くのです。その結果、自分自身の存在自体さえ否定してしまうようになり、「どこか遠くに行ってしまいたい」「私なんていても仕方がない」「自分なんか消えてしまえばいい」「自分なんか生きていても意味がない」など、いわゆる〝希死念慮(きしねんりょ:死にたいと願う状態)〟に陥ってしまうことがあります。すなわち、うつ病を一度患ってしまうと、死に直結しかねない病気だということです。
平成27年の内閣府からの報告によると、健康を問題とした自殺者数(1万2145人)のうち41・8%(5080人)は、うつ病が原因であったことがわかっています。
奈良県をみてみると、自殺者は比較的少ない傾向にあります。厚生労働省の報告では、平成21〜23年まで3年連続して全国順位47位で、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)が全国一少ない状態でした。しかし、ここ数年間において、ややその陰りが見え始めており、全国順位も平成25年42位、平成26年43位、平成27年45位、平成28年には再度47位となりましたが、下降線をたどっている傾向にあります。また、平成23〜27年の過去5年間の平均死亡率を年代別にみると、30歳代までの若年層では全国平均とほぼ変わりませんが、働き盛りである男性の40〜50歳代では全国平均を上回っています。
内科を受診しても医師から「特に異常はない」と言われている方や、体の不調が治ったにもかかわらず一向にこころの疲れが改善しない方も、内科だけでなく心療内科、あるいは精神神経科や精神科も一度受診してみる必要があります。