患者と医者との上手なつき合い方(2)

奈良県医師会 原 健二

 だれもが病気になった時、医師から病気についての説明を聞くことは不安なものです。むずかしい医学用語が飛び出してきて、何を言っているのか分からない、といった経験をした人も多いのではないでしょうか。

 もともと医学用語はむずかしいものです。患者さんや家族がすぐには理解できないのも当然です。このような医療側の不十分な説明が、結果として診療上のトラブルの原因になっていたことも多いと考えています。

 最近、このようなむずかしい医学用語を使わないで、患者さんや家族の人にできるだけ分かりやすく説明することが、我々医療関係者に求められています。

 とは言っても、私たち医師が分かりやすく説明したつもりでも、患者さんや家族に正確には伝わっていないこともしばしば経験します。

 説明を受けてもよく分からなかった時には、遠慮せずに「よく分からなかったのですが」と率直に言ってください。十分に理解しないまま、検査や治療を受けると、あとあと何か予期せぬことが起こったときに患者さんご自身が後悔することになりかねません。私たち医師も、できるだけそんなトラブルは避けたいと願っています。

 何か急な病気になって、初めて大きな病院にかかる時にはとても心配になるものです。ましてや救急車で運ばれて入院した時など、これからどうなるのだろう、このまま死んでしまうのではないか、と不安のドン底です。そんな状況の中で、病気のことや検査や治療のことについて説明を受けると、ついつい「はい、はい」と返事をしてしまいがちです。そんな時こそ、しっかりと説明を聞いておくことが重要です。

 そんな不安のまっただ中にいる時に、分かりやすく説明してくれる医師に出会うと、ほっとすると思います。私たち医師も、患者さんや家族と上手にお付き合いしたいと思っています。ただ、日々の業務や次の診療の予定に追われていて、ゆっくりと話をする時間がないため、時には説明が不足することもあります。

 十分納得できていない時には、医師の予定をあらかじめ尋ねておいて、空いた時間にもう一度説明を受けることをお勧めします。またその時、聞きたいことを箇条書きにして、聞いた内容をメモしておくと良いでしょう。病院によってはあらかじめ説明する内容を書いたコピーを用意していたり、場合によっては図を描いて説明してくれるでしょう。

 いずれにしても、患者さんと医療を提供する側との十分な意思の疎通と信頼関係がないと、良い医療は提供できないし、また受けられないのです。