患者と医者との上手なつき合い方(1)

奈良県医師会 原 健二

 「今までに医者にかかったことがない」という人はいないと思います。

 若くて元気なときはめったなことでは医者へは行きませんが、ある程度の年齢になると、医者通いする人も多くなります。昔からの馴染みの医院にかかる人や、何かのきっかけで病院に通院している人もいるでしょう。

 中高年になって、高血圧や糖尿病など、いわゆる慢性疾患のある人は、決まった医療機関に定期的に通院することが大切です。このような長期的な診察や治療が必要な人は、決まった「かかりつけ医」をもつようにしましょう。

 特殊な病気で専門的な医療を要するということでなければ、近くの診療所などの開業医をかかりつけ医とすることをお勧めします。そうすることによって、その病気だけでなく、カゼや発熱など一時的に具合が悪くなった時でも、日ごろの様子もよく分かっているので安心です。また、健康管理についても、いろいろと相談に乗ってくれるでしょう。

 万が一、より専門的な検査や治療が必要となった時には、その患者さんについての病気の内容を記載した「診療情報提供書」という書類を書いてもらって、専門的な病院を紹介してもらうことになります。

 一度、何かの病気で大きな病院にかかることになった人や、入院していた人は退院後もその病院の外来に通院しているほうが安心だと思うようです。それは、その病院を離れると、また悪くなった時にもう診てもらえないのではないかと思うからでしょう。

 しかし、病院からかかりつけ医へ戻ったり、新たに診療所の開業医にかわるときも、病院では先ほど述べた「診療情報提供書」を書いてくれます。そこには診断や入院中の経過、それに薬の内容が書いてあります。そして必要な時には検査データなども添付されています。

 こうして元のかかりつけ医や新たに近くの診療所に通院するようになったとしても、もしまた調子が悪くなれば、ふたたびかかりつけ医からの診療情報提供書を持ってスムーズに病院へ受診することができます。

 それでも心配な人は、普段は近くの診療所などのかかりつけ医に通院して、2~3ヵ月に1度、病院の専門外来などへ通って経過をみてもらうことも可能です。いずれにしても、そのようないろいろなことを相談することが大切です。

 病院の医師と診療所の医師には、それぞれの役割があります。そして、最近ではほとんどの医療機関で、「病診連携」と言って、病院の医師と、かかりつけの診療所の医師とが連絡を取り合って患者さんの病気を診るというシステムが出来ています。

 お互いがそれぞれの役割を果たすことによって、患者さんに良い医療を提供しようと考えているからです。