奈良県医師会 岩井 誠
日本は、世界に誇る保険制度と充実した医療のおかげで長寿社会を維持しています。その反面、高齢化社会としてのいろいろな問題を抱えるようになりました。
そのひとつ、「寝たきり」の原因として第1位の脳血管障害についで、骨粗鬆症・骨折が増加しています。
お年寄りに起こりやすい骨折の部位として手首、肩(上腕骨)、脊椎、股関節などが挙げられます。骨粗鬆症になると、わずかな力で骨折しやすくなります。階段や玄関でつまずいたり、屋内でも畳のへりや布団に足を引っ掛けただけで容易に転倒してしまうこともあります。
足や股関節の骨折では、入院して手術が必要になることも多く、高齢のために合併症などの頻度も高まり手術も危険を伴うことになります。無事に手術が終了して退院しても、完全に元の状態に回復することは難しく、リハビリテーションや介護を継続して受けることが必要になってきます。
一度骨折すると運動不足になり、筋力も低下して再度骨折を繰り返すこともあります。このような悪循環で「寝たきり」になり肺炎や床ずれを引き起こします。
これらのことを避けるためには、骨や筋肉をできるだけ丈夫な状態に保ち、転倒を予防することが大事です。医療機関や健康診断で骨量検査を受けて適切な診断のもとに早めに治療に取りかかったり、指導を受けることが必要です。
医療機関での治療だけではなく、自分でカルシウムやビタミンDなどの適切な摂取を心がけ、適度な運動をしなければなりません。
運動の程度は年齢や個々の体の状態によっても異なりますが、更年期や高齢期では散歩がいいでしょう。歩くことによって骨に軽い衝撃が加わり、血液の循環が良くなることで骨が作られる働きを促進すると言われています。また筋力の維持にもつながります。外に出て歩くことができない人は、屋内で足あげや開脚運動をしましょう。
このような運動は、無理をせずに毎日続けることが効果的です。高齢の人も、すでに手遅れということはありません。皆に訪れる骨粗鬆症を少しでも予防して、快適な生活を送れるように心がけましょう。