奈良県医師会 赤井 靖宏
関節リウマチは、その名が示すとおり、関節で炎症が起こり、放置すると関節が破壊される病気です。しかし、関節だけの病気ではないことをご存じでしょうか? 実は、関節リウマチは、たくさんの臓器に変化を起こすことがある全身病なのです。ここでは、いくつかの比較的頻度の高い関節リウマチの全身合併症についてお話しましょう。
関節リウマチに起こりやすい全身病として、肺の合併症があります。原因ははっきりわかっていませんが、関節リウマチの患者さんは、肺に線維が増える間質(かんしつ)性肺炎という病気になりやすいことがわかっています。また、関節リウマチの治療に用いられる薬剤の副作用で間質性肺炎が起こる場合もあるため、間質性肺炎がリウマチの影響で起きているのか、薬の副作用で起こっているのか区別できない場合もあります。いつも平気で歩けた坂道で息切れがするとか、咳が続く、発熱が続く、といった場合には、胸のCT検査などを受ける必要があります。
尿を作る役割を果たしている腎臓と関節は全く関係なさそうに思えますが、腎臓も関節リウマチの影響を受けやすい臓器のひとつです。関節リウマチ患者さんは、検尿で異常が出ることが多いほか慢性腎炎になりやすいことも報告されています。
また、関節リウマチの炎症がなかなか落ち着かない場合には、腎臓にアミロイドという異常なたんぱく質が蓄積して、腎臓から大量のたんぱく質が尿中に漏(も)れ出す場合もあります。さらに、関節リウマチの治療薬が腎臓障害を引き起こす場合もあります。
これら腎臓の合併症を発見するためには、定期的な尿検査が重要です。関節の病気といっても、時々は尿にも注目しましょう。
最後に、関節リウマチ患者さんに、眼が乾く、口が乾くなどの乾燥症状がある場合、膠原(こうげん)病の一種である「シェーグレン症候群」を合併している場合があり、適切な検査が必要になります。この病気は、涙や唾液が出にくくなる病気で、膠原病の中では最も関節リウマチに合併しやすいと言われています。
以上のように、関節リウマチは決して関節だけの病気ではありません。気になる症状があるときは、気軽にかかりつけの医師に相談してください。