奈良県医師会 赤井 靖宏
関節リウマチは、手指を中心とした関節に炎症が起こり、放置すると関節変形などを引き起こす病気です。わが国では、約60万人の関節リウマチ患者さんがいると推定されています。
つい最近まで、関節リウマチには、痛み止めや炎症を抑える薬が処方されてきました。しかし、従来の薬剤のほとんどで効果が十分でなく、関節の変形も思ったように抑えられないという状況でした。
最近になって、関節リウマチの炎症にはある種の炎症物質(サイトカインと呼ばれています)が深く関与することがわかり、その炎症物質に対してのみ攻撃を加える、あたかもミサイル攻撃のような治療薬が開発されました。
これらの薬剤は「生物学的製剤」と呼ばれ、すでに世界中で多くの関節リウマチ患者さんに投与されています。
生物学的製剤の特徴は、有効率が高い点です。従来の薬剤は、患者さんによって効果がまちまちで、すべての患者さんに有効な薬剤とは言えませんでした。一方、生物学的製剤は、関節リウマチ患者さんの50~80%に有効であると報告されています。
生物学的製剤はさらに、関節の破壊を防ぐ効果が高いと言われています。
現在わが国では、4種類の生物学的製剤が使われており、さらに近い将来には欧米で認可されている新たな生物学的製剤も使用可能になることが予測されます。
近年は関節リウマチの治療において、より早期に適切な治療を行うことが将来の関節破壊を防ぐとされており、今後、有効性の高い生物学的製剤が関節リウマチ治療の中心になる可能性があります。
生物学的製剤の欠点は、価格が高い点、肺炎などの感染症にかかりやすくなる点、などが挙げられます。したがって、すべての関節リウマチ患者さんに使用できるわけではなく、リウマチ専門医の団体である「日本リウマチ学会」は、生物学的製剤を患者さんに使用する際のガイドラインを定めています。
関節リウマチでお悩みの方は、かかりつけの医師に生物学的製剤の使用についてお尋ねいただいてはいかがでしょうか。