奈良県医師会 赤井 靖宏
糖尿病は、わが国で最も注目されている病気の一つです。最近の統計で現在糖尿病の治療を受けている人は約370万人と言われていますが、治療が必要なのに受けていない患者さんや、自分が糖尿病であることすら知らない患者さんが700万人以上いると言われています。
糖尿病になると、腎臓が悪くなったり眼が悪くなったりすることは皆さんご存じだと思いますが、足の切断の原因になることはご存じでしょうか?
糖尿病は、怪我で足を切断する以外では、足を切断する原因のなかで最も多いと言われています.世界中では、糖尿病が原因で30秒に1本の足が切断されていると言われています。糖尿病の患者さんが持つ、足を切断する原因となるような足の病変を糖尿病足病変(あしびょうへん)と言います。
糖尿病足病変の原因は、糖尿病による神経障害(糖尿病性神経症)と、動脈硬化が原因となった血流の異常、さらに、足にできた小さな傷です。足の水虫やタコなども、足病変の原因になります。
糖尿病の患者さんでは、糖尿病による神経障害のため、足の感覚が鈍くなっている場合があります。足の感覚が鈍くなると、足のケガや火傷(やけど)にまったく気づかなくなり、その結果、傷にばい菌が入り、最終的に足を切断しなければならない状態になるのです。
糖尿病足病変には、早期診断・早期治療が大切です。糖尿病を患っておられる患者さんは、毎日の入浴時に足を観察する習慣をつけてください。足の裏や足の指の間などにも、注意を払う必要があります。足の観察は案外難しいため、鏡を使用したり、家族の協力を得ることも大切です。
糖尿病の患者さんで、足にタコができたり、水虫がある場合には、軽く考えずに必ずかかりつけの医師を受診してください。足の感覚が鈍くなっていると、怪我などに気付かない場合もあるので、色の濃い靴下よりは、白色の靴下を履くことをお勧めします。白い靴下であれば、血液や、ばい菌の感染による膿(うみ)が付着した場合にわかりやすいからです。
糖尿病の合併症のうち、糖尿病足病変は予防できるものです。足の切断を防ぐためにも、糖尿病を持つ患者さんは、自分の足に注意を払うようにしてください。