奈良県医師会 赤井 靖宏
学校の検診、会社の検診、特定健診などで尿検査を受けた場合に、尿たんぱくが陽性という結果が返ってくる場合があります。
皆さんは、このような場合にどうされるでしょうか? 「症状もないし、別にいいか」と放置していませんか? これは、大きな間違いです。
尿にたんぱくが漏れている場合には、腎臓に病気がある可能性があります。尿にたんぱくが漏れ出す病気の代表は、慢性腎炎や糖尿病に伴う腎臓病(糖尿病性腎症)です。これらの病気では、腎臓の糸球体(しきゅうたい)という部分でたんぱくが漏れ出ている場合が多いとされており、たんぱくがもれ出る量が多いほど,腎臓が悪くなりやすいとされています.つまり、尿に漏れ出たたんぱくは、将来、腎臓が悪くなるかどうかを判断する指標にもなるのです。
尿に漏れ出るたんぱくを含め,尿検査の異常は、腎臓が皆さんに警告のための信号を送っていると考えていただきたいのです。なぜなら,多くの腎臓病は末期になるまで症状が全くないからです。以前に尿検査で異常を指摘されていたにもかかわらず、その結果を軽く考えていたため、適切な治療を受ける機会を逃してしまい、気がついたときには透析療法などが必要な末期腎不全の状態になったという患者さんがたくさんおられます。
腎臓の診療を担当する医師は大変悔しい思いをしますし、透析が必要と宣告された患者さんは、大変なショックを受けられます。腎臓病を治療する機会を逃さないためにも、症状のあるなしに関わらず、尿検査で異常を指摘されたときには、必ず再検査を受けてください。
再検査でも異常があった場合には、定期的・継続的に尿検査を受け、尿検査が悪くならないかを調べる必要があります。
特に、尿検査でたんぱくが「2+」以上漏れ出ている状態が続く場合は要注意です。この場合は、かかりつけの医師に腎臓内科医への紹介を依頼してください。
尿検査は、皆さんがご自分の腎臓の状態をうかがう窓です。繰り返しになりますが、尿検査の異常は腎臓からの警戒信号と考えて、放置せずに必ずかかりつけの医師を受診してください。