スギ花粉の春を乗り切るために

奈良県医師会

 スギ花粉症は、花粉症全体のなかでも特に多く、患者数は今や1千万人を超えて、国民病とも呼ばれています。桜前線を心待ちにしながらも外出がおっくうになり、春の到来にゲンナリしている人も多いことでしょう。

 スギ花粉症の患者数は、一九七〇年以降から急に増えてきました。こんなに増えた背景としては、短期間で成長する杉が戦後盛んに植林されたこと、杉は樹齢三十年を超えると花粉を大量につけるようになることが挙げられます。また、環境悪化による地球温暖化も影響しています。

 さらに、以前は成人に多かったのですが、最近、小児の花粉症が増えています。しかも一度かかると自然に治りにくいため、現在では低年齢から中高年まで広範囲の年代層にみられます。

 おもな症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに加え、眼がかゆい、涙がよく出る、目が充血するといったアレルギーによるものです。そのほかにも、咳が出る、のどや皮膚がかゆい、頭が重い・痛い、だるい、眠れない、イライラする感じ、ほてりや発熱、下痢(げり)など症状は多彩で、精神的にも落ち込みがちです。

 対策としては、とにかく花粉を避けることです。花粉の飛ぶ量は、気温の高さや風に左右されます。テレビや新聞で報道される花粉情報に気をつけ、花粉の多い日や風の吹く日、気温の高い時間は外出を控えてください。

 また、出歩く時にはマスクや帽子、メガネやゴーグル、花粉をはじきやすい素材の上着など、花粉を防ぐ道具をうまく利用しましょう。帰宅時には、付着した花粉を外でよく払ってから家に入り、手洗いやうがいに加えて、眼や顔もよく洗います。

 洗濯物や布団は日当たりのいい室内で干す、花粉を舞い上げないよう掃除機やホウキから拭(ふ)き掃除に変えるなど、暮らしの工夫も花粉防止対策のポイントです。

 また、症状ができるだけ軽く済むよう、ふだんから適度な運動や栄養価の高い食事、充分な睡眠を心がけてください。
憂うつに過ごすよりは、耳鼻科や眼科、皮膚科、内科等を受診して助言や処方などを受け、春という季節を少しでも楽しめるようにしてみてはいかがでしょう。