奈良県医師会 平盛 裕子
一般に「血糖値が…」といいますが、「どの時間の血糖値か?」が大切です。前の食事から10時間以上経過して測るものが空腹時血糖です。健診などで朝食を抜いて測るのは「早朝空腹時血糖」というもので、正常では110㎎/dl未満です。126㎎/dl以上になると、糖尿病が疑われます。
それ以外の血糖値は「随時血糖」といいます。随時血糖は140㎎/dl未満が正常です。食後もっとも高い時でも200㎎/dl以上になると糖尿病が疑われますし、すでに糖尿病の治療を受けている方ではコントロールの悪い状態と判断されます。
糖尿病の初期には、随時血糖が高くなっていても空腹時血糖は正常のことがあります。空腹時だけを調べていては、食後の高血糖に気付くのが遅れるかもしれません。いずれかの血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー※)を調べるのがよいといわれています。
食べる物の内容や量によってもその高さ、高くなる時間が変わってきます。自分にとって、食後どれくらいで血糖が最も高くなるかを知っておくことは有用です。薬や注射の効き目をそのパターンに合わせることができれば、きっとコントロールしやすくなるでしょう。
また、自分で血糖を測っている方も増えてきました。簡易血糖測定器を用いて測定し、その結果を診察の時に医師に告げることはたいへん有用です。1か月に1回程度の診察しか受けず、しかもその場の血糖とHbA1cを測るだけで薬を調節したりするのは医師にとっても困難だからです。このほか、治療法を変えた後なども、その治療法が自分に合っているかどうかをいち早く知ることができます。インスリンを打っている人では保険適用になっています。希望される方はかかりつけの医師に相談してみてください。
多くの血糖測定器では、専用の穿刺器具(せんしきぐ)で指先をついて、血を一滴出し、それで調べるようになっています。検査の前には手を洗いましょう。果物をむいたり、触ったりした後に手を洗わずに採血すると、実際の数値より高い数値が出ることがあります。正確な数値を知るために、時には取り扱い説明書を読んで確認しましょう。
※HbA1cは、酸素の運搬役として働くヘモグロビンというたんぱく質に糖が結合したものです。血糖値が慢性的に高い状態が続くと増え、血糖の1~2か月の状態を反映するといわれています。正常は4.3~5.8%(JDS値)ですが、メタボ健診では5.2%以上で指導対象となり、6.1%以上で糖尿病が強く疑われます。現在使われているJDS値は今年から見直される予定です。