糖尿病の検査 その2 尿糖・尿蛋白について

奈良県医師会 平盛 裕子

最近では、尿糖の検査をあまり重視しなくなりました。血糖を測ることが簡単にできるようになってきたからです。しかし、尿糖検査は採血をする必要がないので、上手に利用すれば自分で行うことができて、十分意義もあります。尿糖検査をするときに知っておきたいことがあります。

尿に糖がでるのは、一般には血糖値が160~180㎎/dlを超えたときです。これを「閾値(いきち)」といいます。敷居(しきい)のようなもの、と考えてください。血糖値が敷居の高さを超えたら尿糖が出ますが、敷居を超えないと尿糖は出ません。人によって敷居の高さが違います。若い人では敷居が低いため、血糖が正常でも尿糖がでることがあります。逆に高齢になると敷居が非常に高くなって、高血糖で治療が必要な状態でも尿糖がマイナスということもあるのです。

自分の敷居=閾値がどれくらいかを知っておきましょう。そのためには血糖と尿糖を一緒に検査して、二つの値を突き合わせるとよいでしょう。

他に尿糖で気をつけていただきたいのは薬の影響です。ビタミン剤やビタミンを含む飲み物を飲んでいると、実際は尿糖が出ているのに、試験紙で調べてもマイナスになることがあり、油断しがちです。これはビタミンCの影響です。風邪薬などにもビタミンCが含まれている場合があるので、よく確認してください。

また尿検査は尿糖を調べるだけではありません。むしろ糖尿病の患者さんにとっては、腎臓の状態を表す尿蛋白の検査が尿糖よりも大切です。尿蛋白が(+)と表記されると、それは「陽性」という意味です。(-)「陰性」と記されるのが正常です。(±)とされているときは「プラスマイナスゼロ」ではなく、「痕跡」と考えましょう。つまり、(-)ではないが(+)ほど悪くないというイメージです。

糖尿病の患者さんで病歴が長くなってくると腎臓が悪くなることがあり、進行すると日常生活に支障が出てきます。この糖尿病腎症を進展させないために大切なのが血圧コントロールです。最近の血圧の薬は単に血圧を下げるだけでなく、腎臓や、心臓・脳の血管を守る作用のある薬が増えてきました。