奈良県医師会 大原 賢了
出生数や死亡数などの統計は、国が1月から12月までの1年分を取りまとめ、毎年「人口動態統計」として公表しています。
特に死亡数の統計については、医師が記載する死亡診断書の情報をもとに集計されており、住民の健康状態や医療の進歩の物差しとして、国際比較や都道府県比較などで広く利用されています。
平成22年、本県では1万3,036人の方がお亡くなりになっており、死亡原因別(死因別)にみると、がん(悪性新生物)、心臓病(心疾患)、肺炎、脳卒中(脳血管疾患)、老衰の順となっています。本県は脳卒中の死亡数が他県に比べ少ないと言われており、脳卒中と肺炎の順位が全国順位と入れ替わっていることが特徴と言えます。
人口に占める割合である死亡率は、本県でも、全国でも、年々増加傾向にあり、がんや心臓病等の死因別にみても同様の傾向にあります。一般に、死亡率は医療の進歩や公衆衛生対策により低下するものであり、わが国の乳児死亡率やアメリカのエイズ死亡率が低下したことで有名です。しかし、現在わが国の死亡率は増加しています。これはどういうことなのでしょうか?
答えは、わが国では医療の進歩により、病気で命を落とす割合は年々減少しているのですが、それ以上のスピードで高齢者の割合が増えているため、見かけ上、死亡率を増加させているということなのです。人口構成を固定して計算した死亡率を「年齢調整死亡率」と言いますが、例えば、「がん」の年齢調整死亡率(全国値)は、平成12年で男性214、女性104であったものが、平成21年では男性183、女性92(いずれも人口10万人対。「がんの統計2010」)と、男女とも低下している状況です。
今後、日本は「世界一」の高齢社会になることが予想されています。医療は今後とも進歩を続けるでしょうが、個人や家族の幸せのためには、可能な限り医療のお世話にならずに、長生きすることが理想です。死因の6割がいわゆる生活習慣病である現状を踏まえ、私たち一人ひとりが、常に自分の生活習慣を見直し、病気にならないように努めることが、今最も重要なことと言えます。