ロタウイルス胃腸炎

奈良県医師会 鹿子木 英毅

ロタウイルスに感染することで発症する胃腸炎で、冬から春先にかけて多発するため「冬季下痢症」とも呼ばれます。これは、ほぼ全ての子供が5歳までに一度はかかる病気です。感染経路は経口感染(けいこうかんせん)で、患者の便や吐物(とぶつ)に含まれるウイルスが手やおもちゃなどを介して口から体内に入ることにより、1~3日の潜伏期間を経て発症します。

主な症状は下痢、嘔吐(おうと)、腹痛、発熱で、特に下痢は〝米のとぎ汁様〟と例えられる白っぽい水のような便が頻回に出ることが特徴です。通常4日から7日程度で症状は治まっていきますが、2歳以下の年少児が初めて感染した場合には、ひどい下痢や嘔吐により高度の脱水症状を起こすことがあり、乳幼児にみられる胃腸炎の中では最も重症化しやすいといわれています。まれに脳症や髄膜炎(ずいまくえん)などの合併症を起こすこともあります。

一方で、一度このウイルスに感染すると免疫ができますので、2回目以降にかかったとしても症状は軽く済むことがほとんどです。他のウイルスが原因で起こる多くの病気と同様に、この病気に特別な治療法はありません。こまめに水分を補給し、脱水症状を予防することが大切ですが、症状が強い場合には点滴による水分補給が必要となることもあります。ロタウイルス胃腸炎の予防には、普段からしっかりと手洗いをする習慣をつけることが大切です。汚染された衣服やタオルの消毒には塩素系の洗剤が有効とされています。

また昨年11月から、日本でも生後6~24週間の乳児を対象にロタウイルスに対するワクチンが利用できるようになりました。外国では数年前からすでに使われており、効果が実証されているお薬です。接種を希望される方はかかりつけの医療機関でご相談ください。