突き指

奈良県医師会 亀田 光二

ボールが当たるなどして受傷(じゅしょう)する突き指は、もっともありふれたけがの一つです。よく「突き指ぐらいで病院なんて大げさな」、「いや突き指を馬鹿にしてはいけない」などと言われますが、どちらが正しいのでしょうか?

お知り合いに突き指をした後、指が変形していたり、正常に曲がらなくなったりしている方をご覧になったことはないでしょうか。そこまでなっていなくても、なんとなく節が腫(は)れて大きくなっている方とか…。そのような方は、突き指をしたときに指の骨に傷が付いたり、曲げ伸ばしをするための大切な筋が切れていたりしていたのかもしれません。

代表的な例を3つ挙げてみます。はじめに、整形外科医が「遠位指節間関節(えんいしせつかんかんせつ)」と呼ぶ第一関節が腫れて曲がっているときは、「マレット指」と言って指を伸ばす筋が切れているか、その筋が骨についているところで骨折しているかもしれません。つぎに、「近位指節間関節(きんいしせつかんかんせつ)」と呼ばれる第二関節が腫れ、内出血をしているときは、指の手のひら側で小さく骨が欠けている剥離骨折(はくりこっせつ)が認められるケースが非常に多いものです。最後は、「中手指節間関節(ちゅうしゅしせつかんかんせつ」と呼ぶ第三関節の突き指です。指の付け根の部分に腫れと痛みがあり、指の付け根の軟骨がいたむ骨端離開(こつたんりかい)になり、子どもさんの場合、成長障害が起こることがあります。

これらの例のように『大切なところ』にけがが及んでいれば、場合によれば手術も含めた適切な治療が必要になります。

「指が動くから大丈夫」ではありません。最初は『ひび』程度のものが数日後には完全に離れていた、ということは珍しいことではありません。また、けがの場所と程度によりますが、少しの期間指を動かせないように固定することで、指の変形や動かしにくさ、痛みなどの後遺症は大幅に減らすことができます。逆に『大切なところ』にけがが及んでいないときは積極的に動かしながら治療することもあります。

腫れや内出血があるような突き指の場合、ぜひ一度医師の診察を受け、適切な治療をできるだけ早く始められることをお勧めめします。