奈良県医師会 根津 智子
麻しんは、高熱、咳、全身の発疹を特徴的な症状とするウイルス感染症で、かつては「命定めの病」とも呼ばれ、子どもの命を奪う疾患として広く恐れられていました。また、中耳炎、肺炎、脳炎などを合併することがあり、現在でもなお、年齢にかかわらず命に関わる重篤な疾患です。対症療法(※)以外には治療法がないため、予防接種での予防が非常に重要になります。
平成18年より、中高生や成人の麻しんをなくすために、小学校入学までにМR(麻しん・風しん混合)ワクチンを2回接種することになりました。さらに、「2012年 はしかをゼロに!!」を目標にして、平成20年度から平成24年度末までの5年間限定で、中学1年生、高校3年生についても2回目の予防接種が行われています。これらの取り組みと関心の高まりにより、平成20年に全国で1万人以上発生していた患者数が、平成21年には732人、平成22年には455人と著明に減少傾向にありました。しかしながら、今年に入り20~30歳代の成人麻しんが増えており、注意が必要となっています。
定期予防接種対象者(1歳、年長児、中学1年生、高校3年生など)はできるだけ早くに接種(無料)していただくとともに、麻しん罹患への注意が必要な成人(保育や教育関係者、麻しんが流行中の国へ海外旅行を予定している方など)も、必要があればМRワクチン接種(任意のため有料)をお勧めします。
海外に渡航される際には、現地の感染症の流行状況に関する情報を集めることも大切です。また、麻しん患者さんと接触された際には、お住まいの市町村を管轄する保健所にご相談ください。
多くの人の命を奪ってきた麻しん根絶まで、あともう少しです。みなさまのご協力をお願いいたします。
※対症療法
…病気の原因そのものを取り除くのではなく、症状や苦痛をやわらげる治療法。