奈良県医師会 原 健二
最近、認知症についての関心が高まっています。いろいろな機会に、認知症についての話を聞かれることも多いかと思います。
そのような話の中で、「レビー小体型認知症」という病名を聞かれたことがあるかもしれません。この病気は、もともとパーキンソン病の関連疾患とされていましたが、最近は認知症をきたす重要な病気として注目されています。
認知症をきたす病気としては、アルツハイマー病がいちばん多いことはご存じだと思います。その次に多いのは、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血が原因で起こってくる血管性認知症とよばれる病気です。
この血管性認知症を除いて考えた場合、アルツハイマー病に続いて多いと考えられているのが、「レビー小体型認知症」です。ただ、認知症の中でどのくらいの割合を占めるのかは、認知症の専門医のあいだでも意見が分かれています。これまでアルツハイマー病だと思われていた人が、レビー小体型認知症と診断されることもあるのです。
この病気の症状としては、そこにいないはずの人や動物が見えるといった「幻視(げんし)」や、実際にはないことが起こっていると思い込む「妄想(もうそう)」、テレビの中のことと現実を混同するなどの精神症状が特徴です。とくに、他人と家族をまちがえるといったことも比較的多い症状です。このような精神症状や、注意力・意識の明瞭さが大きく変動することにも注目する必要があります。もちろん、もの忘れの症状もあって、アルツハイマー病との区別をむずかしくしています。
身体的にはパーキンソン病のような緩慢(かんまん)な動作やぎこちなさ、不安定な歩行、よく転倒するという症状を伴うこともあります。
この病気の人は、いろいろな薬剤に敏感に反応することが多く、少量の薬で症状が改善することも、逆に悪くなることもあります。
レビー小体型認知症の診断は、典型的な症例を除くとむずかしく、専門医でも判断に迷うことがあります。そういった意味で、かかりつけ医と専門医との連携が重要です。主治医あるいは奈良県医師会ホームページに掲載されている「奈良県物忘れ相談・認知症診療医療機関」に相談されると良いでしょう。