奈良県医師会 竹川 隆
みなさんは、胃のあたりの痛みや張った感じなどがあって、胃カメラなどの検査を受けても、医者から「どこも悪くありませんよ」とか「少し胃が荒れている程度ですよ」などと言われたことはありませんか?
どうして、このようなことが起きるのでしょうか。これは、がんまたは潰瘍(かいよう)や炎症といった変化だけが、胃の不快感などの症状の原因とは限らないからです。
胃は、食べ物が入ってくると、横にふくらんで食べ物を受け入れ、波打つような運動(食べた物を先に送るための消化管自体の動き)をしながら、胃液と食べ物を混ぜ合わせて消化し、十二指腸(じゅうにしちょう)に送り出します。また、細菌など病原菌の排除といった機能もあります。
これらの機能は、消化管自体からだけでなく、脳からも神経や内分泌を介して、制御を受けています。
ところが、非常に精密な制御を受けているために、様々な原因でそれが乱れることがあるのです。そのため、最初に述べたような症状が出ることがあり、このような病気を「機能性胃腸障害」と呼びます。以前、慢性胃炎または神経性胃炎と言われていたものと、ほぼ一致します。
機能の異常は、レントゲンや胃カメラなど、一般に行われる検査では、わからないこともよくあります。機能性胃腸障害では、胃腸が横に十分広がらない弛緩(しかん)障害や、十二指腸に食べ物を送り出せない排泄(はいせつ)障害がみられることがあります。
ある調査では、「消化器の専門機関を受診した患者さんのうち、約半数の患者さんがこの機能性胃腸障害だった」という報告もあるほどで、胃の病気の中で一番多い病気といえるのです。
機能性胃腸障害の原因は、現在のところ明確になっていませんが、精神的ストレスや、過労などの身体的ストレスが原因といわれており、そうした緊張状態が脳を介して胃のさまざまな機能に影響を与え、胃のもたれや痛みを起こしているのではないかと考えられています。
お薬やストレス対処法、生活習慣の見直しなどで改善する可能性があります。医療機関を受診して、ご相談ください。