A型H1N1(新型インフルエンザ)

奈良県医師会 石塚理香

インフルエンザウイルスは突然変異を起こしやすく、突然変異が起きると、ヒトがまだ免疫を持たない新しいウイルスであるために、過去に多くの感染者や死亡者を出してきました。スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜがそれです。

10年から40年の周期で世界的大流行を起こしているため、近い将来「動物からヒトに感染し、ヒトの体内で増殖、ヒトからヒトへ簡単に感染する」新型インフルエンザが発生するのではないかと懸念されてきました。

新型インフルエンザの効果的な対応に向け、WHOは発生状況に応じて対策を進める警戒レベルをすでに定めていました。

今回のメキシコを中心とした豚インフルエンザの流行状況でWHOは、平成21年4月28日に「警戒レベルを「フェーズ3」から「フェーズ4=ヒトからヒトへの感染が続く。感染集団は小さい」へと引き上げ、さらに30日には、「フェーズ5=大きな集団で感染する」に引き上げました。これは「フェーズ6=世界的大流行」の手前の段階です。各段階で集団での予防方法や医療機関の受診方法も変わりますが、予防にマスクや手洗いが有効なことに変わりありません。落ち着いて、公的な情報に従ってください。

A型H1N1(新型)インフルエンザの症状は、通常のインフルエンザと同様で、熱、咳、のどの痛み、体の痛み、頭痛、悪寒、だるさなどです。ウイルスは、感染者のせきやくしゃみのしぶきで空気中を移動し、ドアノブ、机のような面の上で、2時間程度は生きています。そこに手を触れ、手を洗う前にその手で自分の眼や 口、鼻に触れた場合はうつる可能性があります。ですから、症状のある人がマスク(高度なN95マスクまでは不要)をすることや、全ての人が帰宅時を始めとして、こまめに手洗いをすることは非常に重要です。

海外へ渡航する際は、外務省が出す海外安全情報を頻繁にチェックして対策を講じてください。また、流行地域から帰って10日以内に発熱や呼吸器症状など気になる症状があれば、医療機関を受診する前に、奈良県発熱相談センター(?0742-27-8658、午前9時~午後9時、4月29日現在)に必ず電話で相談し、指示に従ってください。個人個人の対応が、国内での流行を防ぐことにつながります。924字