奈良県医師会 三橋 仁美
高齢化社会を迎え、骨折が原因で寝たきりになる人が増えています。わが国の骨粗しょう症の患者数は1千万人以上もいるとされ、男女比では圧倒的に女性に多いのが現状です。65歳以上の女性のほとんどに骨量の減少が見られます。
骨量(こつりょう)を維持するには、女性ホルモンが大切な役目を担っています。そのため、閉経して女性ホルモンが低下すると、骨量は急激に減少します。
また、骨量のピークが決まるのは17歳から35歳ですので、若い人が無理なダイエットのせいで無月経になると、早くも骨粗鬆症の予備軍になってしまいます。
骨の強さは、骨密度と骨の構造によって決められます。女性ホルモンは、この骨の構造に深い関わりを持っています。食物のカルシウムは、ビタミンDの働きを借りて腸から吸収され、骨に運ばれます。そして、カルシウムが骨にくっつく際に、女性ホルモンが必要になるのです。骨は常にこわされ、またつくられますが、女性ホルモンが足りないと、強い骨が出来上がらずに骨粗しょう症になります。さらに困ったことには、骨折でもしない限り、骨に関する自覚症状がないため、知らないうちに骨粗しょう症になってしまうのです。
そうならないためには、40歳を過ぎたら、骨密度を測定し、自分の骨が大丈夫かどうかを確かめておくことが必要です。
また、閉経した女性に限らず、やせている人、ステロイドの薬剤を服用している人、喫煙やアルコールの多飲等も骨粗しょう症になる要因になります。
現在は骨を増やす薬がたくさんありますから、早期発見、早期治療をして、将来、骨折しないようにしなければなりません。
もちろん、骨の健康にはカルシウムの多い食事(乳製品、大豆製品、緑黄色野菜)をしっかりとることと、適度な日光を浴びながら運動することが大切です。
「背が縮んだ」「腰が痛い」などは、骨粗鬆症の赤信号です。齢(よわい)を重ねても〝骨(ほね)美人〟でいられるよう、背筋を伸ばして生きていきましょう。