鼻炎と副鼻腔炎

山本 裕幸

今年は、近畿圏で2月中旬からスギ花粉が例年を超えてたくさん飛散し、「去年はほとんど症状がなかったのに、今春は目がかゆい、鼻がつまって熟睡できない」と、目を充血させて耳鼻咽喉科を受診する患者さんが多くおられました。

3月下旬にはスギ花粉の飛散もほぼ終わりましたが、間もなくヒノキ花粉が大量に飛び始めました。スギ花粉の飛散が終わり、やれやれと天気のいい日にふとんを干した家庭が多かったのか、「4月になっても、夜ベッドで休むと鼻で呼吸できず、熟睡できずに疲労がとれない」という方が多かったように思います。

さらに今年は、本来、春から夏に飛散するイネ科の雑草の花粉が飛ぶ時期も早く、かつ多いのが特徴だと思われます。

多くの患者さんは、医療機関で花粉症のマニュアルに準じた治療を受けられたことと思います。しかし、注意が必要なことは、市販薬などを多用し、かえって鼻水が出ることを抑えすぎて鼻の中がねばることで、副鼻腔炎(ふくびくうえん、ちくのう症)の状態になってしまうことです。

また、今年は毎日の温度変化が大きく、寒さや乾燥で喉が痛みやすかったところに、かぜのウイルスが相乗りした症状が多かったように思います。

スギやヒノキの花粉の飛散量は、一年おきに「多い・少ない」を繰り返すと言われていますが、春先の異常気象、中国からの黄砂(こうさ)の量、各自の体調などによっても症状が変わります。

花粉症は、発症するしくみについては多くのことが分かっていますが、発症を促進する因子や抑制する因子など本当に知りたいことがまだ分かっていません。

私は約二十間、小学校の定期健診を続けてきましたが、今、学童の3~5割にアレルギー症状を目にし、放置できないところまできていることを痛感しています(が肌身にしみています)。食物の製造過程や生活上での化学物質の多用によるとも言われていますが、証明は難しいところです。

いずれにしても、二十一世紀を担う若者の多くがアレルギー患者というのではあまりにも夢がなく、早い解明が望まれます。

花粉症などのアレルギーで鼻炎や副鼻腔炎が気になるときは、耳鼻咽喉科やかかりつけの医師にご相談ください。