奈良県医師会 嶋 裕子
前回もお話ししましたが、輸血用の血液を人工的に作ることはできないので、日本赤十字社では、皆さんに献血へのご協力をお願いし、献血をしていただいた方には、感謝の気持ちとして7項目の検査成績をお知らせするサービスをしています。
現在、通知を希望された全ての献血者にお知らせしている検査の7項目とは、前回お話しした糖尿病を調べるグリコアルブミン検査(GA)のほか、肝機能検査(ALT・γGTP)、総蛋白(TP) アルブミン対グロブリン比(A/G) コレステロール(CHOL) となっています。
ALTやγ(ガンマ)GTPは、肝臓などに多く含まれる酵素をみることで、肝臓の状態を調べます。総たん白(TP)は、生命維持の役割を果たす80種類以上のたん白質の総量を調べるものです。
アルブミンとグロブリンは、たん白質の種類で、アルブミン(ALB)が約半分を占めます。また、アルブミン対グロブリン比(A/G)が一定範囲内ならば健康ですが、病気によってバランスが崩れると比率が減少します。コレステロール(CHOL)は、脂肪の多い食事で増える脂質です。
また、400ミリリットル献血および成分献血をしていただいた方には、血球計数検査も合わせてお知らせしています。この血球計数検査とは、酸素を肺から体の様々な組織に届ける赤血球、免疫に関係する白血球、出血を止める働きをする血小板が正常な状態にあるかどうかを調べるものです。
なお、肝機能を調べる検査のひとつであるALTの数値が「61 IU/Lという基準」を超えると、輸血用の血液として使わせていただくことができません。この数値が上昇する原因の1つに、「脂肪肝」があります。今まで脂肪肝は心配しなくても良いと言われてきましたが、最近、脂肪肝でも、肝炎や肝硬変、また肝がんに進行する場合があることがわかってきました。
また、脂肪肝の主な原因は肥満と飲酒ですが、飲酒をしなくても一部の人は「非アルコール性脂肪肝炎」になることがわかってきました。ALTが基準を超える人は、一度、医療機関を受診されるようお勧めします。
7月は献血推進月間です。ぜひ、献血にご協力いただき、皆様の健康維持にお役立てください。