新しい日本脳炎ワクチンが接種できます

奈良県医師会 竹内 大志

日本脳炎は、脳や脊髄など中枢神経に発症する病気です。動物の体内で日本脳炎ウイルスが増殖した後、その動物を刺したコガタアカイエカという蚊がヒトを刺して感染します。ほとんど発症しませんが、発症すると特別な治療法はないので、予防接種が唯一の防ぐ手段となります。

わが国では、生活環境の改善や予防接種の普及により、患者発生数は年間数名程度に減少しています。しかし、科学的な因果関係は不明ですが、平成十七年、マウスの脳を使った当時のワクチンの接種後に重症の脳脊髄(せきずい)炎が起きたことにより、事実上、予防接種が中止されていました。このため、新しいワクチンの研究開発が期待されていたところ、今回、マウスの脳を使わない乾燥細胞培養ワクチンが、本年6月より接種できることになりました。

ただし、この新しい日本脳炎ワクチンは、小児への使用実績が十分でないことや、同類のワクチンで脳脊髄炎の発症が報告されていることなどにより、今年度は市町村が行う定期の予防接種の第1期のみとし、第2期には従来のワクチンを使用することになりました。

なお、定期の予防接種では、第1期は「初回接種」として生後6ヵ月以上90ヵ月未満(標準として3歳まで)に2回、接種します。また、初回接種後、おおむね1年後(標準として4歳)に「追加接種」として1回接種します。また、第2期は、9歳以上13歳未満(標準として9歳)に1回接種し、合計4回の接種が必要となります。しかし、先に述べたように有効性や安全性がまだ十分に確立していないことや供給量の不足から、積極的には勧められていません。

日本脳炎への注意としては、まず十分な睡眠をとること、また、野外では長袖や長ズボンを着用し、露出した皮膚に虫よけ剤を使用する、家の近くに沼や池がある時は窓や戸に網戸を使用し、開け閉めの回数を減らすなど、ウイルスを持った蚊に刺されないようにすることが大切です。

さらに、地域により接種事情が異なる場合がありますので、各市町村の窓口で十分な説明を受け、納得した上で接種に臨むことをお勧めします。

新しい日本脳炎ワクチンの安全性と有効性が確認されて、予防接種が普及することを、多くの関係者が期待しています。