胃食道逆流症

奈良県医師会 冬廣 雄一

聞きなれない病名と思われるかもしれませんが、逆流性食道炎とされていた病名を、今はこのように言います。

胸やけ、げっぷ、食べ物が上がってくる感じがする、胸がつかえた感じがする、また、胃の痛みがあったり、何とも言えない胸部や腹部の違和感や不快感がある、横になるとむかつきがひどくなったり、夜中になると不快感で目が覚める、などが主な症状です。

それ以外に、声がかすれたり、耳鳴りや、心臓病を疑うような胸痛、また、咳(せき)が止まらないなどの症状があり、呼吸器科を受診しても異常が見つからないといったこともよくあります。

原因は、胃酸が食道に逆流して、食道に炎症が起こることによります。別に新しい病気ではありませんが、最近、非常に多い疾患だと言われています。

実際、胃の内視鏡検査、特に直径6㎜の細いファイバースコープを鼻から入れる経鼻(けいび)内視鏡検査では、胃と食道の境の部分にかなりの確率で炎症が見つかります。

原因は、高齢者では胃と食道の間の括約(かつやく)筋のゆるみなどが言われてきました。しかし、若い人でも現代社会の食生活の変化、つまり不規則な食生活、または短時間での食事により起こるとされています。

甘いものや脂っこいもの、刺激の強いものを食べることや、暴飲暴食、就寝前の食事、食べた後にすぐ横になること、内蔵脂肪やベルト、コルセットなどでお腹をしめつけること、また便秘症なども原因にあげられています。

治療としては、原因を除去すること、つまり、今「メタボリックシンドローム」という言葉をよく耳にしますが、それによる内臓脂肪を軽減することや、食生活を改善することなどが大切です。

しかし、ストレスの多い現代社会では、気をつけていても症状が軽くならない人も多いようです。

そういう場合には、薬で治す薬物療法の対象となります。プロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる胃酸の分泌を抑える薬が、特に有効です。

以上のように、多彩な症状があるのが胃食道逆流症です。心当たりのある人は一度、消化器科を受診してみてはいかがでしょう。