心肺蘇生法とAED

奈良県医師会 今西 正巳

9月9日は、救急の日です。AEDにより救命された人が、報告されるようになりました。マラソン中に心停止に陥り、AEDによって救命されたタレントの松村邦洋さんは有名になりましたね。医療は日進月歩、AEDが市民にも使えるようになったおかげでしょう。

ところで、AEDを「心臓を動かす機械」と思っていませんか。心肺蘇生、つまり心臓や肺をよみがえらせるために必要な機械なのですが、心臓を動かす魔法の機械ではありません。

さて、医療は常に相当な勢いで進歩していて、心肺蘇生法も変わってきました。蘇生に関わる内容の優先順位が変わってきているのです。

「蘇生のABC」といわれるように、気道確保は最初の「A」で、最も重要に思えますが、今では口から息を吹き込むマウスツーマウスの人工呼吸もそう重要ではありません。医師が行う「気管挿管」、つまり呼吸の確保のために、気管に管を挿入する手技の優先順位も下がりました。

何と言っても重要で優先されるべき行為は、「胸骨圧迫」なのです(心臓マッサージのことですが、最近はこの言葉を使わなくなりました)。

あなたは心停止、すなわち心臓が停止しているという判断ができますか? 多くの人は、「自分は出来ない」と思いがちですが、それは違います。その判断ができなければ、市民に心肺蘇生法を教えませんし、市民が使える電気ショックのAEDが登場するはずもありません。心停止とは、意識がなく、息をしていない状態とされました。

近年、AEDの登場で一挙に救命率が向上するように言われ、その設置場所が非常に多くなってきました。しかし前述のように心臓を動かす機械ではありませんが、救命・蘇生処置時には、必要な機器として普及したのです。やはり心肺蘇生時は、繰り返しになりますが、「胸骨圧迫」が一番大事なのです。

蘇生に対する取り組みがずいぶん変わってきたのは、救急医療に対する研究が進み、心肺蘇生の重要項目が変わってきたからです。

医療従事者が知っておくことはもちろんですが、市民の皆さんも行えることについては、共通認識として知っておいていただきたいと願っています。